平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 200,201

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問 200  正答率 : 44.5%
問 201  正答率 : 42.3%

 国家試験問題

国家試験問題
70歳男性。人間ドックにて糖尿病の疑いを指摘されて受診し、2型糖尿病と診断された。現在、以下の処方で治療中である。

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検査値:Scr1.4 mg/dL、空腹時血糖値96 mg/dL、HbA1c 5.8%、血清マグネシウム値6.5 mg/dL

問200(実務)
検査値から考えたとき、今後、特に留意すべき症状はどれか。2つ選べ。

1 排尿困難
2 悪心・嘔吐
3 血圧上昇
4 味覚障害
5 徐脈


問201(物理・化学・生物)
血清マグネシウムの測定法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 酵素法による定量では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が混在すると低値を示す。
2 誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法による定量では、フレーム方式及び電気加熱方式が利用できる。
3 ICP発光分光分析法による定量では、励起状態のマグネシウム原子又はイオンが基底状態に遷移する際に放出される発光を観測する。
4 ICP質量分析法では、試料中に共存する遷移金属はイオン化されないため、マグネシウムを高感度に定量できる。

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問 200    
問 201    

 e-REC解説

問200 解答 2、5

本患者の検査値から考えたとき、血清マグネシウム値6.5 mg/dLが基準値(1.8〜2.5 mg/dL)より高値を示していることから、高マグネシウム血症と判断できる。高マグネシウム血症では、悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠などの症状が現れることがある。よって、本問の選択肢のうち、本患者が今後、特に留意すべき症状は、2(悪心・嘔吐)と5(徐脈)である。


問201 解答 1、3

1 正
血清マグネシウムの酵素法による定量では、検体中のマグネシウムと試薬中のATPが複合体を形成して酵素であるへキソキナーゼの基質として作用し、グルコースからグルコース−6−リン酸が生成される反応を利用している。生成したグルコース−6−リン酸が、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G−6−PDH)の作用により6−ホスホグルコン酸になるとき、同時にNADPがNADPHとなり、このNADPHの増加速度がマグネシウム量と比例することから定量を行うことができる。
本定量法において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が混在すると、EDTAとマグネシウムがキレートを形成し、ATPとの複合体が形成できなくなるため、酵素のへキソキナーゼの基質として働きにくくなる。そのため、NADPHの生成は抑制され測定値は低値を示す。

2 誤
誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法は、高周波誘導結合法により得られるアルゴンプラズマを利用して定量を行う。なお、フレーム方式及び電気加熱方式は原子吸光光度法において、試料を原子化する方法として用いられている。

3 正
ICP発光分光分析法による定量では、高周波誘導結合法により得られるアルゴンプラズマによって励起された試料原子又はイオンが基底状態に遷移する際に放出される発光を観測する。

4 誤
ICP質量分析法では、試料中に共存する遷移金属はほとんどイオン化されている。
ICP質量分析法は、高周波誘導結合法により得られるアルゴンプラズマによって生成したイオンを質量分析計によって各m/z(質量/電荷)ごとに分離し、強度を測定することで被験元素の定性や定量を行う方法である。本法では、ほとんどの元素がイオン化されており、1価の陽イオン(z=1)として生成されているため、質量分析計において質量(m)の違いから同位体元素の識別や定量を高感度に行うことができる。

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