平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 332

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問 332  正答率 : 59.8%

 国家試験問題

国家試験問題
注射液A(pH3.4、2 mL/アンプル)、注射液B(pH8.6、2 mL/アンプル)及び注射液C(pH9.1、10 mL/アンプル)をシリンジ内で混合する。
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薬剤師は各注射液のpH変動スケール(上図)に基づいて薬剤の調製を検討した。混合の可否及び順序として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 どの順序でも白濁するので混合できない。
2 AとBを混合した後、Cを混合する。
3 AとCを混合した後、Bを混合する。
4 BとCを混合した後、Aを混合する。
5 どの順序でも混合できる。

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問 332    

 e-REC解説

解答 4

複数の注射液を混合する場合、pH変動スケールを参考に各注射液のpH、緩衝性の強さ、配合変化(白濁など)の可能性を考慮する必要がある。
pH変動スケールとは、pH変動試験の結果によって作成されるものであり、pH変動により溶解度が変化することで生じる結晶析出や混濁などの配合変化の予測に用いられる。pH変動試験では、注射剤に0.1 mol/L HClまたは、0.1 mol/L NaOHを加えてpHを変化させ、沈殿や混濁などの外観変化を観察し、0.1 mol/L HClまたは、0.1 mol/L NaOHを添加して変化が生じた時点のpHを変化点pHとする。また、注射剤に0.1 mol/L HClまたは、0.1 mol/L NaOHを添加しても何も変化のない場合は、10 mL添加を最大量とし、10 mL添加しても外観変化が現れなかった場合は、その時点のpHを最終pHとする。
注射液A(試料pH3.4)、B(試料pH8.6)、C(試料pH9.1)の最終pH、変化点pHは以下の通りである。
スクリーンショット 2018-09-03 10.10.20.png


また、注射薬の緩衝性を判断する際の指標として、pH移動指数がある。pH移動指数は、変化点pHと試料pHとの差の絶対値又は最終pHと試料pHとの差の絶対値であらわし、pH移動指数の和が大きいほどその注射剤の緩衝性は弱く、逆に和が小さいほど緩衝性は強くなる。上図よりAのpH移動指数の和は4.4(1.1+3.3)、BのpH移動指数の和は5.2(4.0+1.2)、CのpH移動指数の和は1.9(0.5+1.4)となる。よって、緩衝性の強さC>A>Bとなる。
本問のように、3種類以上の注射液を混合する場合、pH変動による配合変化を避けるために、一般的にpHの近い注射液同士から混合することとされている。そのため、本問の注射液では、A(pH3.4)とC(pH9.1)を最初に混合するのは不適切であり、A(pH3.4)とB(pH8.6)の混合またはB(pH8.6)とC(pH9.1)の混合を検討する。
A(pH3.4)とB(pH8.6)を混合した場合、混合液のpHは3.4〜8.6となるが、緩衝性がA>Bであるため、混合液はAのpH3.4に近づくと予測される。BのpH変動スケールより、注射液BはpH4.6以下で白濁するため、配合変化の可能性を考慮すると初めにAとBを混合するのは不適切だと考えられる。
B(pH8.6)とC(pH9.1)を混合した場合、混合液のpHは8.6〜9.1となり、両者の注射液は配合変化を起こさないpHのため、最初に混合することは適切であると考えられる。また、注射液Cは緩衝性が高いため、BとCの混合液はCの緩衝性の影響を受け、混合液にAを混合してもpHの低下を起こしにくく、配合変化(Bの白濁)が起こる可能性は低いと考えられる。以上より、BとCを混合した後、Aを混合するのが適切である。

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