平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 266,267,268,269

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問 266  正答率 : 70.5%
問 267  正答率 : 66.0%
問 268  正答率 : 72.7%
問 269  正答率 : 68.5%

 国家試験問題

国家試験問題
55歳男性。10年前に2型糖尿病と診断され、生活習慣の改善とナテグリニドの服用を開始した。5年前にHbA1c値が8.4%まで上昇したため、メトホルミン塩酸塩が追加され、その後増量されて以下の処方となった。
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問266(実務)
処方1に対して、特に注意すべき副作用の初期症状はどれか。2つ選べ。

1 尿路感染症による排尿痛
2 メラニンの過剰生成による色素沈着
3 心機能低下による下肢の浮腫
4 乳酸アシドーシスによる全身倦怠感、過呼吸
5 低血糖によるめまい、ふらつき


問267(薬剤)
各グラフの実線は、ナテグリニド錠を食直前に服用した際の血漿中濃度推移を表す。本剤を食直後に服用した場合、予想される血漿中濃度推移(破線)を表す最も適切なグラフはどれか。1つ選べ。
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問268 (実務)
この患者は、処方1による治療を行っていたが、血糖コントロール不良状態が3ヶ月続いたため、以下のインスリン製剤を追加することになった。
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この患者に対する服薬指導に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 インスリン デテミルが追加になりましたので、これまで処方されていたナテグリニドの服用は中止になります。
2 膵臓のインスリン分泌能がなくなってしまったため、インスリン製剤が必要となりました。
3 なるべく同じ部位で、少しずつずらした場所に注射してください。
4 体重増加しやすくなりますので、食事・運動療法をしっかり行いましょう。
5 インスリン デテミルは基礎インスリンを補充するものなので、低血糖に注意する必要はありません。


問269 (薬剤)
インスリン デテミルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 速効型のインスリン製剤である。
2 皮下注射後、等電点沈殿に伴い微結晶になり、ゆっくりと溶解して血中に移行する。
3 ヒトインスリンにミリスチン酸基を付加し、血漿中のアルブミンとの結合を利用して作用の持続化を図っている。
4 投与ごとの血糖降下作用のばらつきが少なく、安定した血糖コントロールが期待できる。
5 等張化剤としてD-グルコースが用いられている。

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問 266    
問 267    
問 268    
問 269    

 e-REC解説

問266 解答 4、5

ナテグリニドの重大な副作用として、低血糖、肝機能障害などがあり、メトホルミンの重大な副作用として、低血糖、乳酸アシドーシス、肝機能障害、横紋筋融解症などがある。そのため、処方1に対して、特に注意すべき副作用の初期症状は、低血糖によるめまい、ふらつきと乳酸アシドーシスによる全身倦怠感、過呼吸などである。


問267 解答 4

ナテグリニドは、食直後投与では食前投与と比較し最高血中濃度到達時間(Tmax)が延長し、最高血中濃度(Cmax)が低下するが、血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)は食事前後の投与で差は認められない。以上の特徴に該当するグラフは4である。
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問268 解答 3、4

インスリン製剤を用いた糖尿病治療法として、BOT(Basal Supported Oral Therapy)がある。BOTでは、服用中の経口糖尿病治療薬を継続しながら、持効型インスリン製剤(インスリン デテミルなど)を1日1回注射し、経口糖尿病治療薬とインスリン製剤の効果を合わせて血糖コントロールを行う。これにより、持効型インスリン製剤により空腹時血糖値を改善することで、全体の血糖推移が低下し糖毒性を軽減することが可能となる。

1 誤
BOTでは、服用中の経口糖尿病治療薬を継続しながら、持効型インスリン製剤を用いるため、これまで処方されていたナテグリニドの服用は中止しない。そのため、設問のように服薬指導することは適切ではない。

2 誤
本患者は2型糖尿病であり、膵臓のインスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性が原因と考えられる。インスリン分泌能がなくなるのは、1型糖尿病であり、今回のインスリン製剤追加の目的は空腹時血糖値などの改善である(前記参照)。そのため、設問のように服薬指導することは適切ではない。

3 正
本剤の皮下注射は、上腕、大腿、腹部、臀部等に行う。投与部位により吸収速度が異なるため部位を決め、その中で注射場所を毎回変える必要があり、前回の注射場所より2~3 cm離して注射する。そのため、設問のように服薬指導することは適切である。

4 正
インスリン製剤を使用することや、糖尿病治療薬によってインスリン作用が増強することなどにより、インスリンの脂肪合成促進作用などが亢進し、体重の増加につながるおそれがある。そのため、設問のように服薬指導することは適切である。

5 誤
インスリン製剤の重大な副作用として、低血糖が現れることがあり注意しなければならない。そのため、設問のように服薬指導することは適切ではない。


問269 解答 3、4

1 誤
本剤は、持効型インスリン製剤である。

2 誤
皮下注射後、等電点沈殿に伴い微結晶になり、ゆっくりと溶解して血中に移行するのは、同じ持効型インスリン製剤であるインスリン グラルギンに関する記述である。

3 正
本剤は、ヒトインスリンのB鎖30位のトレオニン残基を除去し、B鎖29位のリジン残基にミリスチン酸基を付加したインスリン製剤である。ミリスチン酸基を付加したことにより、血漿中のアルブミンと結合しやすくなり、末梢組織への分布が緩徐になることで作用が持続化されている。

4 正
本剤は、他のインスリン製剤と比較して、個体内変動指数(CV%)が有意に小さく、投与ごとの血糖降下作用のばらつきが小さいことが示されており、安定した血糖コントロールが期待できる。なお、個体内変動指数(CV%)とは、平均に対するばらつきの大きさの比率を表す指標である。

5 誤
本剤の等張化剤としては、濃グリセリンが用いられている。

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