平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 276,277

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問 276  正答率 : 57.2%
問 277  正答率 : 65.4%

 国家試験問題

国家試験問題
69歳男性。7年前から高血圧と糖尿病のため、エナラプリルマレイン酸塩、メトホルミン塩酸塩及びグリメピリドを服用している。
これまで特に問題なく過ごしていたが、最近、動悸を感じるようになり病院を受診した。心電図から心房細動と診断され、以下の薬剤が追加処方された。
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なお、患者の身体所見及び検査値などは次のとおり。身長176 cm、体重72 kg、血圧148/93 mmHg、体温37.0℃、心拍数161回/min(不規則)、呼吸数15回/min、BUN 21 mg/dL、Scr 1.7 mg/dL、Ccr 42 mL/min、AST 14 U/L、ALT 16 U/L

問276(実務)
この患者の薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 処方1の主目的は、血圧を十分に低下させることである。
2 脈拍が不規則なので、プロプラノロール塩酸塩の処方を提案する必要がある。
3 処方2の代替薬の1つにリバーロキサバンがある。
4 処方2は心原性脳梗塞の予防目的で処方されている。
5 PT-INR値が2.0〜3.0になっているか、モニタリングが必要である。


問277(薬剤)
薬剤師は、処方2について減量を考慮すべきと判断した。その理由として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ベラパミル塩酸塩との併用により、P-糖タンパク質が阻害され、消化管吸収が増大するため。
2 メトホルミン塩酸塩との併用により、尿細管分泌が抑制され、血中からの消失が遅延するため。
3 腎排泄能力の低下により、血中からの消失が遅延するため。
4 グリメピリドとの併用により、CYP2C9による代謝が低下し、血中からの消失が遅延するため。
5 肝代謝能力の低下により、血中からの消失が遅延するため。

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問 276    
問 277    

 e-REC解説

問276 解答 3、4

1 誤
ベラパミル塩酸塩は、Ca2+チャネル遮断薬であり心機能を抑制するため、頻脈性不整脈や狭心症及び心筋梗塞の治療に用いられる。そのため、血圧を十分に低下させることを主目的に処方されているわけではない。

2 誤
本患者の脈拍は不規則であり心房細動と診断されているが、その対応としてベラパミル塩酸塩が追加処方されている。また、プロプラノロール塩酸塩は、アドレナリンβ受容体遮断薬であり、ベラパミル塩酸塩との併用により過度の心抑制を引き起こすおそれがある。そのため、この段階でプロプラノロール塩酸塩の処方を提案することはない。

3 正
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセルは抗凝固薬であり、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制に適応されるため、心原性脳梗塞の予防目的で処方されている。リバーロキサバンも抗凝固薬であり、同じ適応を有するため代替薬となりうる。

4 正
解説3参照

5 誤
PT−INR値は、血液凝固能検査の指標であり、ワルファリン投与時に2.0〜3.0になっているかモニタリングする値である。本患者にはワルファリンは処方されていないため、PT−INR値のモニタリングは必要ない。


問277 解答 1、3

本患者は、ベラパミルとダビガトランエテキシラートが処方されており、両剤は併用注意の組み合わせである。ベラパミルは、P−糖タンパク質阻害作用を有するため、ダビガトランの消化管吸収を増大させるおそれがある。また、ダビガトランは腎消失型薬物であり、本患者のScrが1.7 mg/dL(男性基準値:0.7〜1.3 mg/dL)であることから腎排泄能力の低下が認められる。これらのことから、本患者にダビガトランを投与した場合、血中濃度が上昇するおそれがあるため、下記用法・用量に記載されている通り、ダビガトランの1回110 mg(110 mgカプセルを1カプセル)1日2回投与への減量を考慮するべきである。
なお、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセルを非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制に適応する際の用法・用量は以下の通りである。
用法・用量:通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150 mg(75 mgカプセルを2カプセル)を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110 mg(110 mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。

1 正
前記参照

2 誤
ダビガトランとメトホルミンとの間に相互作用は認められない。

3 正
前記参照

4 誤
ダビガトランとグリメピリドとの間に相互作用は認められない。

5 誤
本患者は、検査値などからは肝代謝能力の低下は認められない。なお、ダビガトランは腎消失型薬物であり、CYPによる代謝を受けないため、肝代謝能力の低下は減量を考慮する理由とはならない。

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