平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 278,279

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問 278  正答率 : 62.3%
問 279  正答率 : 52.6%

 国家試験問題

国家試験問題
36 歳女性。腎移植目的で入院となった。移植に伴いサンディミュン®カプセル、ミコフェノール酸モフェチルカプセル、メチルプレドニゾロン錠を術前より内服することとなり、担当薬剤師が指導を開始した。移植手術は無事に終了し医師の指示によりサンディミュン®カプセルをネオーラル®カプセルに切り替えることになり、引き続き担当薬剤師が指導を継続することになった。
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問278(実務)
薬剤師がこの患者に行う術前、術後の服薬指導として、適切でないのはどれか。2つ選べ。

1 これらの薬を飲んでいる間は、こまめに手洗いをしてください。
2 抵抗力が下がり、感染症にかかりやすくなるので、麻疹や風疹などのワクチン接種をしておきましょう。
3 シクロスポリンは血液中の薬の濃度を測りながら服用する量を決めますので、血液検査が多くなります。
4 グレープフルーツジュースはシクロスポリンの効果を弱めてしまいますので、飲まないでください。
5 薬を切り替える時には副作用がでることがありますので、気になることがあれば言ってください。


問279(薬剤)
術前に服用していたシクロスポリンの油性製剤と術後に処方された自己乳化型マイクロエマルション製剤の特徴に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 自己乳化型マイクロエマルション製剤の方が、バイオアベイラビリティが高い。
2 いずれも消化管液中でw/o型エマルションが形成される。
3 自己乳化型マイクロエマルション製剤の方が、薬の吸収に対する食事の影響が小さい。
4 自己乳化型マイクロエマルション製剤の方が、油相と水相の間の界面張力が大きいため、液滴が微細化される。
5 シクロスポリンは水溶性が高いため、主にエマルションの水相に分配する。

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問 278    
問 279    

 e-REC解説

問278 解答 2、4

1 適切
免疫抑制下では感染しやすくなるおそれがあるため、こまめに手を洗ったり、うがい、歯磨きをして清潔にするように指導する。

2 不適切
免疫抑制下で麻疹と風疹のワクチンである生ワクチンを接種すると、接種したワクチン株による病原性が現れることがあるため、免疫抑制薬を投与中の患者に生ワクチンの接種は禁忌である。したがって、麻疹や風疹などの生ワクチン接種は控えるよう指導する。

3 適切
シクロスポリンの経口投与時の吸収は個人差があるので、血中濃度が高い場合の副作用並びに血中濃度が低い場合の拒絶反応の発現などを防ぐため、血中濃度の測定を頻回に行い、投与量を調節する。したがって、指導内容は適切である。

4 不適切
グレープフルーツジュースは腸管のCYP3A4阻害作用を有する。そのため、シクロスポリンなどのCYP3A4で代謝される薬物をグレープフルーツジュースで服用すると、腸管での代謝が抑制され、血中濃度が上昇し作用の増強が起こる。したがって、グレープフルーツジュースはシクロスポリンの効果を強めてしまうので、飲まないよう指導する。

5 適切
サンディミュン®カプセルからのネオーラル®カプセルに切り替える場合、吸収不良の改善によりシクロスポリンの血中濃度上昇のおそれがあるため、副作用の発現に注意するよう指導する。


問279 解答 1、3

サンディミュン®カプセルは、シクロスポリンの油性製剤であり、経口投与後、胆汁酸により乳化され、上部消化管から吸収されるという過程を経るため、消化管吸収において、胆汁分泌量や食事による影響を受けやすく、吸収にバラつきがみられる。これを改良したシクロスポリン製剤がネオーラル®カプセルである。
ネオーラル®カプセルは、シクロスポリンの自己乳化型マイクロエマルション製剤であり、シクロスポリンの消化管内における胆汁酸や食事の影響が小さくなるようにした製剤である。

1 正
自己乳化型マイクロエマルション製剤のネオーラル®カプセルの方が、バイオアベイラビリティが高い(前記参照)。

2 誤
自己乳化型マイクロエマルション製剤のネオーラル®カプセルは、消化管液中でo/w型エマルションが形成されるが、シクロスポリンの油性製剤であるサンディミュン®カプセルではエマルションの形成は起こらない。

3 正
自己乳化型マイクロエマルション製剤のネオーラル®カプセルの方が、薬の吸収に対する食事の影響が小さい(前記参照)。

4 誤
自己乳化型マイクロエマルション製剤のネオーラル®カプセルの方が、界面活性剤により油相と水相の間の界面張力が小さくなるため、液滴が微細化される。

5 誤
シクロスポリンは脂溶性が高いため、主にエマルションの油相に分配する。

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