平成27年度 第100回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 206,207

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問 206  正答率 : 58.8%
問 207  正答率 : 57.0%

 国家試験問題

国家試験問題
43歳男性。胃潰瘍の治療のため、オメプラゾール腸溶錠20 mgを1日1回投与されることになった。

問206(実務)
オメプラゾール腸溶錠を適切に使用するための情報として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 逆流性食道炎の治療にも用いられる。
2 小腸の管腔内で活性体に変化する。
3 通常、胃潰瘍の治療では、最長8週間まで投薬できる。
4 CYP2D6の活性が低い場合は、オメプラゾールの血中濃度が上昇しやすい。
5 併用すると、アタザナビル硫酸塩の吸収率が高まる。


問207(物理・化学・生物)
オメプラゾールの構造及びその生体内での変化に関して誤っている記述はどれか。1つ選べ。
スクリーンショット 2016-07-08 18.55.20.png


1 オメプラゾールはイオウ原子上に不斉中心を持つ。
2 Aはオメプラゾールの分子内置換反応によって生成する。
3 BからCへの変換によって生成する分子Eは水である。
4 Cは酵素Fのシステイン残基と反応してDになる。
5 オメプラゾールは酵素Fを不可逆的に阻害する。

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問 206    
問 207    

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問206 解答 1、3

1 正
プロトンポンプ阻害薬であるオメプラゾールは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療に用いられる。

2 誤
オメプラゾールは、胃壁細胞の酸性領域に集約し、酸によって活性体となる。活性体となったオメプラゾールは、H,K−ATPaseを不可逆的に阻害し、胃酸分泌を抑制する。

3 正
オメプラゾール腸溶錠は、胃潰瘍及び逆流性食道炎に対し、通常、成人には1日20 mgを経口投与し、最長8週間まで投与することが可能である。なお、十二指腸潰瘍に対しては、最長6週間まで投与することが可能である。

4 誤
オメプラゾールは、主にCYP2C19及び一部CYP3A4によって代謝されるため、CYP2D6の活性が低い場合でも、オメプラゾールの血中濃度はほとんど変化しない。なお、オメプラゾールの血中濃度が上昇しやすいのは、CYP2C19の活性が低い場合である。

5 誤
オメプラゾールにより胃酸分泌が低下すると、アタザナビル硫酸塩の溶解性が低下し、吸収率が悪くなることで、血中濃度が低下することがある。よって、オメプラゾールとアタザナビル硫酸塩は併用禁忌である。


問207 解答 2

1 正しい
オメプラゾールの構造中に含まれるイオウ原子(構造中のスルホキシド>S=O)は不斉中心となる(下図参照)。
スクリーンショット 2016-07-08 18.55.39.png


2 誤っている
オメプラゾールとAの構造を比較すると、Aでは、オメプラゾールの五員環の−N=C<の二重結合が単結合になり、NにHが、CにN(ピリジンのN)が結合していることがわかる。よって、Aはオメプラゾールの分子内付加反応により生成することがわかる。
スクリーンショット 2016-07-08 18.55.49.png


3 正しい
BとCの構造を比較すると、BからNHのHとS−OHのOHが脱離してCが生成していることがわかる。このことより、BからCへの変換によって生成する分子は水(H2O)であると考えられる。

4 正しい
Cは酵素F(H,K−ATPase)中のシステイン残基の−SH基と反応してDとなる。

5 正しい
オメプラゾールは活性体(C)に変化した後、酵素F(H,K−ATPase)とジスルフィド結合を形成することで、酵素F(H,K−ATPase)の活性を不可逆的に阻害する。

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