平成27年度 第100回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 216,217

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問 216  正答率 : 56.3%
問 217  正答率 : 70.9%

 国家試験問題

国家試験問題
20歳女性。体重40 kg。劇症肝炎のため、兄を臓器提供者とした生体部分肝移植を受けた。タクロリムス水和物カプセル1 mg 1回2カプセル(1日4日カプセル)1日2回 朝夕食後投与にて維持療法を行っていたが、下記の処方が追加になった。
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問216(実務)
本患者の薬物療法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 悪性腫瘍の発生に注意する。
2 高血糖症状の副作用発現に注意する。
3 免疫低下による感染の防止のため、乾燥弱毒生風しんワクチンを摂取する。
4 ミコフェノール酸モフェチルは、タクロリムス水和物の副作用を軽減する目的で使用する。


問217(物理・化学・生物)
移植臓器に対する拒絶反応及びその制御に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 臓器提供者(ドナー)と受容者(レシピエント)が親子であれば、一般に拒絶反応は起こらない。
2 ドナーとレシピエントのヒト白血球抗原(HLA)の不適合は、拒絶反応の要因となる。
3 移植された臓器が、レシピエントの免疫反応により傷害される反応を移植片対宿主反応(graft-versus-host reaction, GVHR)という。
4 移植後、数日から数週間で起こる急性拒絶反応に、T細胞は関与しない。
5 タクロリムスは、細胞内の特定のタンパク質と複合体を形成し、転写因子の活性化に関わるホスファターゼを阻害する。

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問 216    
問 217    

 e-REC解説

問216 解答 1、2

1 正
ミコフェノール酸モフェチルと他の免疫抑制薬を併用すると、過度の免疫抑制により、悪性リンパ腫及び他の悪性腫瘍(特に皮膚)が発生する可能性があるため、注意が必要である。

2 正
タクロリムス水和物は重大な副作用として、高血糖症状が現れることがあるため、観測を十分に行い、異常が認められた場合には、減量、休薬など適切な処置を行う必要がある。

3 誤
タクロリムス水和物及びミコフェノール酸モフェチルと乾燥弱毒生風しんワクチン(生ワクチン)を併用すると、タクロリムス水和物及びミコフェノール酸モフェチルの免疫抑制作用により、風しんを発症する可能性が増加するため、両者は併用禁忌とされている。

4 誤
ミコフェノール酸モフェチルは、本患者の肝移植後の拒絶反応を抑制するために用いられていると考えられる。


問217 解答 2、5

1 誤
拒絶反応は、宿主の細胞性免疫によるもので、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(ヒトではHLA)の不一致が原因となる。親子間でも、HLAが一致することがほとんどないため、親子間の臓器移植であっても拒絶反応が起こる可能性が高い。

2 正
前記参照

3 誤
移植された臓器が、レシピエントの免疫反応により傷害される反応を宿主対移植片反応(host−versus−graft−reaction,HVGR)という。なお、移植片対宿主反応(graft-versus-host reaction, GVHR)とは、移植された臓器に存在するT細胞により、レシピエントの臓器が傷害させる反応のことである。

4 誤
急性拒絶反応は、移植後数日から数週間後の起こる拒絶反応のことであり、T細胞が中心となる細胞性免疫によって起こる。

5 正
タクロリムスは、T細胞に存在する結合タンパク質と複合体を形成し、カルシウム依存性ホスファターゼ(カルシニューリン)を阻害することで、転写因子NF−ATの核内への移行を阻害し、IL−2産生を抑制する。

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