平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 169

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問 169  正答率 : 43.1%

 国家試験問題

国家試験問題
ある薬物60 mgをヒトに静脈内投与した後の血中濃度時間曲線下面積(AUC)が2.0 mg・hr/Lであった。この薬物の肝クリアランスが2/3に低下したとき、経口投与後のAUCは、肝クリアランス低下前の経口投与後のAUCに対して何倍になるか。最も近い値を1つ選べ。ただし、この薬物の体内動態は、線形1−コンパートメントモデルに従い、肝代謝のみで消失し、消化管から100%吸収されるものとする。また、肝血流速度は80 L/hrとする。

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問 169    

 e-REC解説

解答 3

薬物の経口投与時の血中濃度時間曲線下面積(AUCpo)は①式で表すことができる。
スクリーンショット 2019-06-07 16.14.04.png
問題文において、「肝代謝のみで消失」とあるため、CLtotはCLh(肝クリアランス)と等しくなり、①式を②式へ変換することができる。
スクリーンショット 2019-06-07 16.16.40.png
また、バイオアベイラビリティFは③式で表すことができる。
スクリーンショット 2019-06-07 16.17.35.png
ここで、肝抽出率Eh=CLh/QhFh=1−Eh、問題文において「消化管から100%吸収される」、「肝代謝のみで消失」とあるため、Fa=1、Fg=1となり③式を変換すると、④式となる。
FFh=1−Eh=1−CLh/Qh・・・④
②式に④式を代入すると、⑤式となる
スクリーンショット 2019-06-07 16.20.48.png
さらに、問題文において「肝血流速度は80 L/hr」とあるため、Qh=80 L/hrとなり⑤式を変換すると、⑥式となる。
スクリーンショット 2019-06-07 16.23.01.png
⑥式より、肝クリアランス低下前のAUCpoと肝クリアランス低下後のAUCpoを比較する。

(1)肝クリアランス低下前
この薬物の肝クリアランス低下前のCLtotは、問題文に「ある薬物60 mgをヒトに静脈内投与した後の血中濃度時間曲線下面積(AUC)が2.0 mg・hr/Lであった。」とあることから、⑦式より求めることができる。
スクリーンショット 2019-06-07 16.27.06.png
CLtot≒CLh(肝クリアランス)であるため、
肝クリアランス低下前のCLhは30 L/hrとなり⑥式に代入する。
スクリーンショット 2019-06-07 16.32.24.png
よって、肝クリランス低下前のAUCpoは0.02 Dpoとなる。

(2)肝クリアランス低下後
問題文より、「肝クリアランスが2/3に低下」とあるため、
肝クリアランス低下後のCLhはCLh=30 L/hr・2/3=20 L/hrとなり⑥式に代入する。
スクリーンショット 2019-06-07 16.31.41.png
よって、肝クリランス低下後のAUCpoは0.0375Dpoとなる。

したがって、経口投与後のAUCは、肝クリランス低下前が0.02 Dpo、肝クリランス低下後が0.0375 Dpoであるため、この薬物の肝クリアランスが2/3に低下したときのAUCは、低下前の経口投与後のAUCに対して、約1.8倍(0.0375Dpo /0.02 Dpo)となる。

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