平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 314,315

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問 314  正答率 : 89.8%
問 315  正答率 : 90.4%

 国家試験問題

国家試験問題
58歳男性。健康診断で血圧が高いことを指摘されて近医を受診し、下記の薬剤が処方された。日常的に車を使用し、ほとんど運動の習慣はない。また、長年の喫煙習慣があり、塩辛いものを好む。服薬指導時に「特に気になる症状もないし、副作用が怖いので、薬は飲まないでおこうと思っている。」と薬剤師に話をしていた。BMIは32、診察室血圧は156/101 mmHg、家庭血圧は152/96 mmHgであった。

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問314(実務)
この患者に対する服薬指導を行う際に、薬剤師が知っておくべきこととして正しいのはどれか。1つ選べ。

1 高血圧の診断には、診察室血圧に加え、家庭血圧を測定することが重要だが、両者の値が異なる場合は診察室血圧を優先する。
2 禁煙は精神的ストレスの原因となるので、高血圧患者に対する禁煙指導は避けた方がよい。
3 降圧薬の服用により血圧がうまくコントロールできた場合、生活習慣の改善は必要ない。
4 降圧目標は、年齢や合併症の有無に応じて決められる。
5 減塩目標は、食塩10 g/日未満である。


問315(法規・制度・倫理)
この患者は、「薬を飲まないでおこうと思っている。」という発言からも、行動変容ステージの無関心期(前塾考期)にいると考えられる。この患者を関心期(塾考期)へと促していく働きかけとして適切なのはどれか。2つ選べ。

1 患者の反応にかかわらず一方的に服薬指導や生活指導を行う。
2 健康行動の必要性や有効性について情報を提供する。
3 患者に健康行動実施の宣言をしてもらう。
4 患者の服薬に対する考えや感情(解釈モデル)を聞く。
5 主治医に連絡し、患者を説得してもらう。

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問 314    
問 315    

 e-REC解説

問314 解答 4

1 誤
診察室血圧と家庭血圧の値が異なる場合は、家庭血圧による高血圧診断を優先する。

2 誤
高血圧治療の基本は、非薬物療法(生活習慣の改善)であり、食塩制限(1日食塩摂取量の目標値は男性8g未満、女性7g未満であるが、高血圧患者の目標値は6g未満)、禁煙、アルコール制限、運動などを行う。非薬物療法で目標血圧まで低下しない場合は非薬物療法を継続しながら薬物療法を開始する。薬物療法では、患者の状況に合う薬物を第一選択薬から選び、単剤少量から開始する。

3 誤
生活習慣の改善は、高血圧予防や降圧薬開始前のみならず、降圧薬開始後においても重要である。

4 正
降圧目標は、患者の年齢、合併症を考慮して設定する。

5 誤
解説2参照


問315 解答 2、4

行動変容とは、健康保持・増進または病気の改善のために行動・ライフスタイルを望ましいものに改善することをいい、人が行動(生活習慣)を変える場合には、以下の「無関心期(前熟考期)」→「関心期(熟考期)」→「準備期」→「実行期(行動期)」→「維持期」の5つのステージを経由すると考えられている。

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1 誤
一方的な服薬指導や生活指導は望ましくない。患者の反応や状況を確認しながら、服薬指導を行うことが求められる。

2 正
行動変容ステージモデルの無関心期にいる患者に対して、健康行動の必要性や有効性について情報を提供することは効果的である。

3 誤
無関心期にいる患者に対して健康行動実施の宣言は強要できない。生活習慣を変えることで健やかな生活を実現している人の成功例を伝えることが効果的である。健康行動実施の宣言は、準備期の患者への働きかけとして効果的である。

4 正
患者自身の考えや感情を聞くことによって、行動変容ステージに合わせた服薬指導を行うことができる。

5 誤
主治医に連絡し、情報共有することは重要であるが、患者自身の主体的な健康行動が重要になるため、説得することは望ましくない。

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