平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 274,275

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問 274  正答率 : 68.5%
問 275  正答率 : 58.3%

 国家試験問題

国家試験問題
70歳男性。切除不能な胃がんの治療のため、S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)/シスプラチン療法を施行している。数日前から右下肢にけいれん様のふるえが認められている。精密検査の結果、左脳にがん転移が認められ、緊急入院となった。けいれん発作の予防としてフェニトインの服用を開始した。

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問274(実務)
薬剤師が本患者のがん治療においてモニタリングをすべき項目として、最も優先度が低いのはどれか。1つ選べ。

1 テガフールの累積投与量
2 フェニトインの血中濃度の上昇
3 S-1/シスプラチンによる骨髄抑制
4 S-1/シスプラチンによる嘔吐
5 シスプラチンによる腎毒性


問275(薬剤)
同一処方でさらに1週間継続服用したところ、せん妄様症状が認められ、その時のフェニトイン血中濃度は50 µg/mLであった。この患者の定常状態におけるフェニトインの平均血中濃度を16 µg/mLとしたい。1日あたりの投与量(mg)として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
ただし、測定したフェニトイン濃度は定常状態における平均血中濃度であるものとし、フェニトインの体内からの消失速度はMichaelis-Menten式で表され、Michaelis定数を4 µg/mL、バイオアベイラビリティを100%とする。なお、S-1/シスプラチン療法は今後も同じ用法・用量で継続するものとする。

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問 274    
問 275    

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問274 解答 1

1 優先度が低い
S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)/シスプラチン療法では、S-1は21日間連続投与後14日間休薬し、シスプラチンは8日目のみに投与しその後14日間休薬するとされているが、いずれの薬剤も累積投与量の制限はない。したがって、モニタリングする項目として優先度が低い。なお、累積投与量に注意が必要な代表的な薬剤としては、アントラサイクリン系抗がん剤が挙げられる。(アントラサイクリン系抗がん剤は用量依存性の心毒性を引き起こすため。)

2 優先度が高い
S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)とフェニトインの併用により、フェニトインの代謝が抑制され血中濃度が上昇し、フェニトイン中毒(嘔気・嘔吐、眼振、運動障害等)を起こすことがあるため、併用する際は患者の状態を十分に観察することとされている。したがって、モニタリングする項目として優先度が高い。

3 優先度が高い
S-1/シスプラチン療法は、骨髄抑制や嘔吐を引き起こすことがあるため、S-1/シスプラチン療法を行う際は患者の状態を確認することとされている。したがって、モニタリングする項目として優先度が高い。

4 優先度が高い
解説3参照

5 優先度が高い
シスプラチンは急性腎不全等の重篤な副作用を起こすことがあるため、頻繁に臨床検査を行うなど、患者の状態を十分に確認することとされている。したがって、モニタリングする項目として優先度が高い。


問275 解答 5

フェニトインの体内からの消失速度はMichaelis−Menten式(①式)で表される。

スクリーンショット 2019-07-16 14.21.20.png

経口投与時の投与速度は、②式で表される。

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定常状態では、投与速度は消失速度Vと等しい。また、本処方よりフェニトイン錠100 mgを1日3錠投与しているため、投与間隔τ=1 day、1日当たりの経口投与量Dpo=300 mgとなる。さらに、問題文より、「同一処方でさらに1週間継続服用したところ、せん妄様症状が認められ、その時のフェニトイン血中濃度は50 µg/mL」、「測定したフェニトイン濃度は定常状態における平均血中濃度である」、「Michaelis定数を4 µg/mL、バイオアベイラビリティを100%」であことから、定常状態時の平均血中濃度C=50 µg/mL、Michaelis定数Km=4 µg/mL、バイオアベイラビリティF=1となる。
以上のことから①式、②式を用いて、最大消失速度Vmaxを以下のように求めることができる。

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次に、この患者の定常状態におけるフェニトインの平均血中濃度Cを16 µg/mLとするための、1日当たりの投与量を①式より求める。

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定常状態では1日当たりの投与量と消失速度V=259 mg/dayは等しいため、1日当たりの投与量は259 mgである。

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