平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 272,273

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問 272  正答率 : 50.6%
問 273  正答率 : 36.6%

 国家試験問題

国家試験問題
36歳男性。10年前に双極性障害の診断を受け、処方1による治療を行っている。

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患者は、10日前に腹痛により自宅近くの整形外科を受診し、処方2の薬剤の服用を開始した。

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2日前より下痢や嘔吐が出現し、今朝、ふらつきと発語困難を生じたため、緊急搬送された。リチウムの血清中濃度は、2.2 mEq/L(血中濃度 1.8 mEq/Lに相当)と測定された。薬剤師が残薬を確認したところ、指示どおりの服薬状況であった。

問272(実務)
この患者への対応において、薬剤師が行うべき提案のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 球形吸着炭の投与
2 D-マンニトール注射液の投与
3 補液の投与
4 アセチルシステイン内用液の投与
5 炭酸リチウム錠の投与


問273(薬剤)
緊急搬送時でのこの患者におけるリチウムの全身クリアランス(L/hr)に最も近い値はどれか。1つ選べ。ただし、計算には血中濃度を用い、測定したリチウム濃度は定常状態における平均濃度であるものとする。また、リチウムのバイオアベイラビリティは100%とし、炭酸リチウム(Li2CO3)の分子量は73.9である。

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問 272    
問 273    

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問272 解答 2、3

本患者は下痢や嘔吐、ふらつきや発語困難などの症状が発現していることや、リチウムの血中濃度が治療域(0.6〜1.2 mEq/L)を超えていることから、リチウムの中毒症状が現れていると考えられる。
原因として、整形外科で処方されたロキソプロフェンNa錠の影響が考えられる。ロキソプロフェンNaは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)でありシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、プロスタグランジン(PG)の合成を抑制することで鎮痛作用を発揮するが、PG合成低下により腎血流を低下させ腎障害を生じることがある。その結果、腎排泄型薬物であるリチウムの尿中排泄が抑制され血中薬物濃度が上昇し、リチウム中毒が発現した可能性が高い。

1 誤
リチウムは吸着炭に吸着しないため、提案は不適切である。

2 正
D-マンニトールなどの利尿薬を投与することで、リチウムの排泄促進及び電解質平衡の回復を行う。したがって、提案は適切である。

3 正
補液を投与することで、リチウムの排泄促進及び電解質平衡の回復を行う。したがって、提案は適切である。

4 誤
アセチルシステインはアセトアミノフェン中毒の解毒に用いられるが、リチウム中毒には無効であるため、対応は不適切である。

5 誤
本患者はリチウム中毒であると考えられるため、炭酸リチウム錠の追加は不適切である。投与中止の提案が必要である。


問273 解答 2

繰り返し投与時の定常状態における平均血中濃度(Css.av)は①式より求めることができる。

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①式を変換すると②式で表すことができる。

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炭酸リチウム(Li2CO3)は以下のように解離し、1 mmol/LのLi2CO3から2 mmol/L(2 mEq/L)のLiが生成する。

Li2CO3→2Li+CO32−

したがって、炭酸リチウム(Li2CO3)の定常状態における平均血中濃度Css.avは、本患者のリチウム(Li)の定常状態における平均血中濃度が1.8 mEq/Lの場合、0.9 mmol/Lとなる。さらに、炭酸リチウム(Li2CO3)の分子量は73.9であるため、Css.av=66.51 mg/L(0.9 mmol/L×73.9)となる。
さらに、処方より炭酸リチウム錠1日1回、1回3錠投与、問題文に「リチウムのバイオアベイラビリティは100%」とあるため、投与間隔τ=24 h、経口投与量Dpo=600 mg、バイオアベイラビリティF=1 であり②式に代入する。

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したがって、炭酸リチウムの全身クリアランスCLtotは、0.38 L/hrとなる。

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