平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 264,265,266,267

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問 264  正答率 : 39.6%
問 265  正答率 : 94.6%
問 266  正答率 : 88.2%
問 267  正答率 : 70.7%

 国家試験問題

国家試験問題
58歳男性。糖尿病の診断を受け近医で薬物療法を継続していたが、定期的に受診せず、アドヒアランスも良好ではなかった。今回、吐き気、食欲不振、呼吸困難を訴え受診したところ、重症の尿毒症のため入院となった。血液検査の結果は以下のとおりであった。

検査値:体表面積未補正 eGFR 14.6 mL/min、HbA1c 7.7%(NGSP値)、ALT 14 IU/L、AST 22 IU/L

お薬手帳を確認したところ、以下の薬剤が処方されていた。尿毒症の治療を開始するとともに、退院に向けて本剤を中止し、代替薬を検討することになった。

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問264(薬剤)
カンファレンスにおいて薬剤師は、体表面積未補正eGFRが異なる2つの群に対し、メトホルミン塩酸塩錠500 mgを経口単回投与した時の腎クリアランス及び血中濃度時間曲線下面積(AUC)をまとめた表を示した。表に基づいた説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。ただし、いずれの群も、メトホルミンのバイオアベイラビリティは60 %とし、血漿タンパク結合は無視できるものとする。

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1 メトホルミンは、主に糸球体ろ過によって腎臓から排泄されます。
2 この患者におけるメトホルミンの全身クリアランスは、約170 mL/minと予想されます。
3 この患者におけるメトホルミンの尿中排泄率は、腎機能正常者の約1/3と予想されます。
4 処方どおりに服用し続けた場合、この患者におけるメトホルミンの平均血中濃度は腎機能正常者の約3倍になると予想されます。
5 この患者が処方どおりに服用し続けた場合、メトホルミンの平均血中濃度は約10 µg/mLと予想されます。


問265(薬理)
この患者がメトホルミンを処方どおりに服用し続けた場合、起こり得る副作用とその機序の組合せとして、正しいのはどれか。1つ選べ。

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問266(実務)
代替薬を提案するにあたり、医薬品インタビューフォームから得られた情報を参考に、薬剤師は候補薬のリストを作成した。リストの内容に基づいて提案する薬剤として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

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1 ピオグリタゾン錠
2 ナテグリニド錠
3 グリメピリド錠
4 シタグリプチン錠
5 リナグリプチン錠


問267(実務)
前問で選んだ薬剤について、薬剤師が患者に行う説明として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 尿に糖を出す薬です。
2 消化管からの糖の吸収を抑える薬です。
3 インスリンの分解を抑える薬です。
4 肝臓で糖ができるのを抑える薬です。
5 血糖値に応じてインスリンの分泌を促進する薬です。

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 e-REC解説

問264 解答 2、4

1 誤
薬物の腎排泄は糸球体ろ過と尿細管分泌によって行われる。設問中の表より、糸球体ろ過速度を表す体表面積未補正eGFRに対して、腎クリアランスの方が大きいため主に尿細管分泌により腎排泄されていると考えられる。

2 正
本患者(腎機能低下者)におけるメトホルミンの全身クリアランスCLtot(腎機能低下)は、問題文に「500 mgを経口単回投与した」、「バイオアベイラビリティは60 %」さらに、表より腎機能低下群における経口投与時のメトホルミンのAUCは1,800 mg•min/Lとあることから①式より求めることができる。

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3 誤
尿中排泄率Aeは②式より求められる。

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②式を用いて、腎機能正常群のAeと本患者(腎機能低下者)のAeを比較する。

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したがって、メトホルミンのAeは、腎機能正常群が0.95、本患者(腎機能低下者)が0.87であるため、本患者におけるメトホルミンの尿中排泄率は、腎機能正常者の約9/10(0.87/0.95)となる。

4 正
繰り返し経口投与時のメトホルミンの平均血中濃度Css.avは④式より求めることができる。

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問題文より、F=0.6であり、処方より1回500 mgを1日2回投与とあり、Dpo=500 mg、投与間隔τ=12 hであるため、④式を変換すると⑤式となる。

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④式を用いて、腎機能正常者のCss.avと本患者(腎機能低下者)のCss.avを比較する。

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したがって、メトホルミンのCss.avは、腎機能正常群が0.83 mg/L、本患者(腎機能低下者)が2.5 mg/Lであるため、処方どおりに服用し続けた場合、本患者におけるメトホルミンの平均血中濃度は腎機能正常者の約3倍(2.5/0.83)になると予想される。

5 誤
選択肢4より、この患者が処方どおりに服用し続けた場合、メトホルミンの平均血中濃度Css.avは、約2.5 µg/mLと予想される。


問265 解答 5

メトホルミンはビグアナイド系薬であり、AMP活性化キナーゼ(AMPK)の活性化により、末梢での糖利用を促進し肝臓での糖新生を抑制することで血糖値を低下させるが、その結果、糖利用時に過剰なピルビン酸が乳酸に代謝されたり、乳酸からの糖新生が抑制されることで、乳酸が蓄積され乳酸アシドーシスを引き起こすおそれがある。


問266 解答 5

1 不適切
ピオグリタゾンは主な代謝部位又は排泄部位が肝臓であり活性代謝物が存在する。代謝物も含めた尿中排泄率は約30%であり、腎機能障害患者に投与すると、活性代謝物を含めたピオグリタゾンの腎排泄が低下し低血糖を起こすことがあるため、提案する薬剤として不適切である。

2 不適切
ナテグリニドは主な代謝部位又は排泄部位が肝臓であり活性代謝物が存在する。代謝物も含めた尿中排泄率は約40%であり、腎機能障害患者に投与すると、活性代謝物を含めたナテグリニドの腎排泄が低下し低血糖を起こすことがあるため、提案する薬剤として不適切である。

3 不適切
グリメピリドは主な代謝部位又は排泄部位が肝臓であり活性代謝物が存在する。代謝物も含めた尿中排泄率は約58%であり、腎機能障害患者に投与すると、活性代謝物を含めたグリメピリドの腎排泄が低下し低血糖を起こすことがあるため、提案する薬剤として不適切である。

4 不適切
シタグリプチンは主な代謝部位又は排泄部位が尿中であり活性代謝物が存在する。代謝物も含めた尿中排泄率は約87%であり、腎機能障害患者に投与すると、活性代謝物を含めたシタグリプチンの腎排泄が低下し低血糖を起こすことがあるため、提案する薬剤として不適切である。

5 適切
リナグリプチンは主な代謝部位又は排泄部位が糞中であり活性代謝物が存在しない。未変化体の尿中排泄率は約0.6%であり、腎機能障害患者に投与できるため、提案する薬剤として適切である。


問267 解答 5

前問で選択したリナグリプチンはジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害薬であり、グルカゴン用ペプチド−1(GLP−1)などの内因性インクレチンの分解を抑制し、血糖依存的に(血糖値に応じて)インスリンの分泌を促

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