平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 204,205

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問 204  正答率 : 64.5%
問 205  正答率 : 54.5%

 国家試験問題

国家試験問題
25歳男性。造血幹細胞移植6ヶ月目で移植片対宿主病(GVHD)を発症し、閉塞性細気管支炎と診断されたため、入院し酸素療法を開始した。体温38.2℃、動脈血酸素飽和度は85%、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)38 Torr、動脈血pH7.4である。なお、患者は免疫抑制剤としてタクロリムスを服用している。

問204(実務)
この患者の病態及び治療として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 GVHDは、移植した組織を宿主のT細胞が攻撃することで発症する。
2 GVHDの急性期の治療には、メチルプレドニゾロンの短期間大量投与が必要である。
3 造血幹細胞の再移植が必要である。
4 タクロリムスを減量する必要がある。
5 気管支拡張薬としてβ2刺激薬を用いる。


問205(物理・化学・生物)
呼吸器疾患患者の病態を把握するには動脈血酸素分圧(PaO2)とヘモグロビン酸素飽和度の関係(下図)を理解することが重要である。実線は、正常pH(7.4)血液のヘモグロビン酸素飽和度を表し、点線は、低pH(7.2)血液のヘモグロビン酸素飽和度を表す。また、動脈血酸素飽和度はヘモグロビン酸素飽和度と同じとする。健常者及び前問の患者におけるガス交換や動脈血液ガスに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2019-07-18 18.40.26.png

なお、標準大気圧(1.013×105 Pa)は上空から地上までに1 m2あたり約1×104 kgの気体が存在している状態である。水銀の密度は13.5 g/mLである。

1 常温、常圧における吸気と呼気の成分気体の分圧は、吸気と呼気中の成分気体分子のモル比に比例する。
2 医療現場で汎用される圧力の単位Torrは水銀柱の高きで圧力を示すものであり、標準大気圧は1013 Torrとなる。
3 この患者のPaO2は約40 Torr程度であると推定される。
4 同じPaO2の場合、PaCO2が増加するとヘモグロビンの酸素飽和度は低下する。
5 酸素療法を開始した後のPaO2とへモグロビン酸素飽和度の関係は、図の点線に近づく。

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問 204    
問 205    

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問204 解答 2、5

1 誤
GVHD(移植片対宿主病)は、移植した組織片中のT細胞が宿主(レシピエント)の組織や細胞を非自己と認識して攻撃する病態である。

2 正
GVHDの急性期の治療には、メチルプレドニゾロンなどの副腎皮質ホルモンの短期間大量投与が行われる。

3 誤
造血幹細胞の再移植が必要な場合として、生着不全や白血病の再発などが起きた場合が挙げられる。設問文にその記載がないため、再移植は必要ない。

4 誤
本患者はGVHD が発症しているため、免疫抑制薬のタクロリムスを減量することで、GVHDを悪化させる恐れがある。なお、骨髄移植後にGVHDの発症がない場合、徐々にタクロリムスの減量を行い、移植後6ヶ月程度で中止する。

5 正
本患者は閉塞性細気管支炎と診断されており、気管支を拡張する目的でβ2刺激薬が用いられる。


問205 解答 1、4

1 正
常温、常圧における混合気体の分圧は、混合気体分子のモル比に比例する。常温、常圧における吸気と呼気の成分気体の分圧は、吸気と呼気中の成分気体分子のモル比に比例する。

2 誤
標準大気圧1 atm は760 Torr(=760 mmHg=1013 hPa)である。

3 誤
設問文より、「動脈血酸素飽和度はヘモグロビン酸素飽和度と同じとする」とあるため、ヘモグロビン酸素飽和度は85%、動脈血はpH 7.4であることがわかる。これをグラフより読み取ると、この患者のPaO2は約60 Torr程度であると推定される。

スクリーンショット 2023-01-31 12.18.25.png

4 正
PaCO2が増加するとpHは低下する。グラフより、同じPaO2でpH7.4からpH7.2に低下したとき、ヘモグロビン酸素飽和度は低下することが分かる。

5 誤
酸素療法を開始すると、相対的にPaCO2が減少するため、pHは上昇する。よって、PaO2とヘモグロビン酸素飽和度の関係は、図の実線に近づく。

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