平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 208,209

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問 208  正答率 : 56.8%
問 209  正答率 : 52.7%

 国家試験問題

国家試験問題
65歳男性。労作時胸部圧迫感を訴え医療機関を受診している。冠動脈造影により左冠動脈前下行枝に75%の強度狭窄を認め、以下の処方薬を服用していた。3週間後に狭窄部分を押し広げる治療法である経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による薬剤溶出ステント留置を行う目的で病院に入院することになった。

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問208(実務)
入院後に持参薬(上記処方)に関するPCI施行前後の服薬計画を立案するにあたって、薬剤師から医師に提案する内容として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 PCI施行前日までは、両持参薬とも内服する必要はありません。
2 PCI施行前にプラスグレル塩酸塩錠を増量する必要はありません。
3 PCI施行後もアスピリン腸溶錠、プラスグレル塩酸塩錠の服用を継続する必要があります。
4 PCI施行後はプラスグレル塩酸塩錠のみ服用を継続する必要があります。
5 PCI施行後はアスピリン腸溶錠のみ服用を継続する必要があります。


問209(物理・化学・生物)
プラスグレルは生体内の代謝により活性代謝物Cに変換されて効果を発揮するプロドラッグである。以下の記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

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1 プラスグレルはチエノピリジン系医薬品である。
2 プラスグレルから代謝物Aへの変換にはプロテアーゼの作用が必須である。
3 代謝物Aと代謝物Bとは互変異性体の関係にある。
4 代謝物Bにはジアステレオマーが存在する。
5 活性代謝物Cは血小板の標的タンパク質と共有結合する。

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問 208    
問 209    

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問208 解答 2、3

1 誤
本患者は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う予定であり、その際のステント留置によるステント血栓症が生じる可能性があるため、これら抗血小板薬の服用を中止すると、血栓形成の危険性が上がるため、服用を続ける。

2 正
PCIが施行される虚血性心疾患にプラスグレル塩酸塩を用いる場合、通常、成人には、投与開始日にプラスグレルとして20 mgを1日1回経口投与し、その後、維持用量として1日1回3.75 mgを経口投与する。なお、PCI施行前に本剤3.75 mgを5日間程度投与されている場合、初回負荷投与(投与開始日に20 mgを投与すること)は必須ではない。本患者は、3週間後の手術までプラスグレル塩酸塩錠を服用することとなるため、PCI施行前にプラスグレル塩酸塩錠を増量する必要はない。

3 正
冠動脈へ留置した金属製ステントに血栓形成が起こり、最終的に急性閉塞してしまうことがあるため、PCI施行後もアスピリン腸溶錠とプラスグレル塩酸塩錠を継続して服用する必要がある。

4 誤
解説3参照

5 誤
解説3参照


問209 解答 2

プラスグレル塩酸塩はプロドラッグであり、生体内で活性代謝物に変換された後、血小板膜上のADP受容体P2Y12を選択的かつ非可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制する。また、プラスグレルはチエノピリジン系抗血小板薬に分類され、本剤の他にチクロピジン、クロピドグレルなどがある。
プラスグレルは、経口投与されると小腸細胞でカルボキシルエステラーゼにより速やかに代謝され、さらに小腸及び肝臓の薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)により代謝されることで活性代謝物Cとなる。

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1 正しい
前記参照

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2 誤っている
プラスグレルから代謝物Aへの変換は、エステル結合が加水分解されていることからエステラーゼが関与していると考えられ、プロテアーゼが関与しているのではない。なお、プロテアーゼは、ペプチド結合(−CO−NH−)を加水分解する酵素である。

3 正しい
代謝物A(エノール形)と代謝物B(ケト形)とは、互変異性の関係にある(前記参照)。

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4 正しい
代謝物Bはキラル炭素を2つ有するため、立体異性体は(R,R)(R,S)(S,R)(S,S)の計4つが存在する。したがって、(R,R)体と(S,R)体のように、各異性体にはジアステレオマーが存在する。

5 正しい
活性代謝物Cのチオール基(−SH)は、血小板の標的タンパク質(ADP受容体P2Y12)のシステイン残基のチオール基(−SH)とジスルフィド結合(共有結合)し、非可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制する。

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