平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 212,213

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問 212  正答率 : 67.9%
問 213  正答率 : 64.8%

 国家試験問題

国家試験問題
60歳男性。ぜん息のため吸入ステロイド薬と共にテオフィリンを服用している。今回、右腰のまわりに痛みを伴う水疱が出現したので皮膚科を受診したところ、帯状疱疹と診断され、以下の処方せんを持って薬局を訪れた。

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面談により、この患者には、過去に口唇ヘルペスでバラシクロビル錠の服用の経験があることが分かった。また、営業職であるため忙しく、1 日5 回の服用を守ることは困難であると訴えた。そこで、皮膚科の医師に疑義照会したところ、以下の処方に変更となった。

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なお、この患者のクレアチニンクリアランスは50 mL/min であった。

問212(実務)
この患者に処方されたバラシクロビル錠に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 口唇ヘルペスと帯状疱疹に対する用法・用量・投与日数は異なる。
2 テオフィリンと併用しても、テオフィリンの中毒症状が現れることはない。
3 アシクロビルに比べて副作用が現れにくい。
4 腎機能が低下した時には、投与間隔の延長あるいは減量を伴った投与間隔の延長の措置を行う。
5 7日間服用することで痛みは消失するが水疱は消失することはない。


問213(物理・化学・生物)
バラシクロビルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

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1 アシクロビルの脂溶性を増大させることを意図して創出されたプロドラッグである。
2 アシクロビルとL−バリンがエステル結合を介して連結した構造をもつ。
3 生体内に存在する酵素の作用により、波線部aにおいて結合が切断される。
4 生体内でbに示す酸素原子がリン酸化されることによって薬理活性を示す。
5 小腸のペプチドトランスポーターを介して吸収される。

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問 212    
問 213    

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問212 解答 1、4

1 適切
口唇ヘルペスと帯状疱疹に対する用法・用量・投与日数は異なる。
バラシクロビル錠は、口唇ヘルペス(単純疱疹)の治療に用いる場合、通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
一方、帯状疱疹の治療に用いる場合、通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。

2 不適切
バラシクロビルとテオフィリンを併用すると、バラシクロビルの活性代謝物のアシクロビルが、テオフィリンの代謝を阻害するため、テオフィリンの血中濃度が高くなり、テオフィリン中毒が現れやすくなる。

3 不適切
バラシクロビルはアシクロビルの経口吸収性を高めた製剤であり、AUCも高くなりやすいため、アシクロビルに比べて副作用が現れやすい。

4 適切
バラシクロビルは腎消失型薬物であり、腎機能の低下している患者では、副作用があらわれやすいので、投与間隔の延長や投与量の減量を考慮する必要がある。

5 不適切
帯状疱疹における水疱(水ぶくれ)の症状は発症後数日で膿疱化して消失していくが、帯状疱疹後神経痛は慢性化しやすいため、痛みは消失するとは限らない。

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参考:感染・炎症・免疫31(4)、295(2001)


問213 解答 2、5

1 誤
バラシクロビルは、アシクロビルの5’位にL−バリンをエステル結合させることにより、小腸のペプチドトランスポーターを介して吸収されるように、アシクロビルの経口吸収性を改善することを意図して創出されたプロドラッグである。

2 正
解説1参照

3 誤
バラシクロビルは、エステラーゼの作用により下図の波線部において結合が切断される。

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4 誤
バラシクロビルは、生体内でエステル結合が加水分解されるとアシクロビルに変換される。その後、アシクロビルのヒドロキシ基(−OH)がリン酸化を受けるため、リン酸化を受けるのはbの酸素原子ではない(上図参照)。

5 正
解説1参照

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