令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 96

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問 96  正答率 : 51.5%

 国家試験問題

国家試験問題
0.100 mol/Lリン酸二水素一ナトリウム水溶液10.00 mLを0.100 mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。この滴定に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、リン酸は三塩基酸で、pKa1=2.12、pKa2=7.21、pKa3=12.32であり、log102=0.301、log103=0.477とする。

1 10.00 mLを正確に量るために、メスピペットが用いられる。
2 滴定前のリン酸二水素一ナトリウム水溶液のpHは約1.6である。
3 水酸化ナトリウム水溶液を9.00 mL加えたとき、滴定溶液のpHは約8.2である。
4 水酸化ナトリウム水溶液を10.00 mL加えたとき、滴定溶液のpHは約9.8である。
5 この滴定の終点(10.00 mL付近)の検出には、pH指示薬としてメチルオレンジが適している。

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問 96    

 e-REC解説

解答 3、4

リン酸(H3PO4)は三塩基酸であり、以下のように水素イオン(H)を3段階で解離するため、4つの分子種を生じる。また、下記のグラフは、各分子種のモル分率とpHの関係を表す。

スクリーンショット 2022-10-06 15.31.28.png

1 誤
一定量の正確な液量を計測する場合は、全量ピペット(ホールピペット)を用いる。メスピペットは、目盛りの精度が低く、液量を正確に量ることができない。

2 誤
リン酸二水素一ナトリウム(NaH2PO4)水溶液中において、存在する分子種はほとんどがH2PO4ある。前記のグラフより、ほとんどがH2PO4であるpHは、pKa1とpKa2の間であると考えられ、以下のように計算される。

スクリーンショット 2022-10-06 15.33.40.png

3 正
0.100 mol/L NaH2PO4水溶液10.00 mLに0.100 mol/L NaOH水溶液を9.00 mL加えたとき、以下のように反応する。なお、NaH2PO4 は1.00 mmol(0.100 mol/L×10.00 mL)、NaOHは0.900 mmol(0.100 mol/L×9.00mL)存在する。

スクリーンショット 2022-10-06 15.33.58.png

反応後の水溶液は、NaH2PO4が0.100 mmol、Na2HPO4が0.900 mmol存在する緩衝液となる。この水溶液中では、NaH2PO4が酸、Na2HPO4が塩基として働くリン酸の第二段階反応であるため、pHはHenderson–Hasselbalch式より以下のように求められる。

スクリーンショット 2022-10-06 15.34.38.png

4 正
0.100 mol/L NaH2PO4水溶液10.00 mLに0.100 mol/L NaOH水溶液を10.00 mL加えたとき、以下のように反応する。なお、NaH2PO4 は1.00 mmol(0.100 mol/L×10.00 mL)、NaOHは1.00 mmol(0.100 mol/L×10.00mL)存在する。

スクリーンショット 2022-10-06 15.34.47.png

反応後の水溶液中において、存在する分子種はほとんどがNa2HPO4(HPO42-)である。前記のグラフより、HPO42-が最も多く存在するpHは、pKa2とpKa3の間であると考えられ、以下のように計算される。

スクリーンショット 2022-10-06 15.35.05.png

5 誤
この滴定の終点(10.00 mL付近)におけるpHは約9.8(解説4参照)のため、pH指示薬としてアルカリ性領域に変色域をもつフェノールフタレインなどが適している。なお、メチルオレンジは酸性領域に変色域をもつpH指示薬である。

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