令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 100

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問 100  正答率 : 58.7%

 国家試験問題

国家試験問題
生体における膜電位の原理を理解するためには、濃淡電池の作動原理を知ることが必要である。電解質として用いる硫酸亜鉛の濃度のみが異なる2つの亜鉛半電池を塩橋でつないだ化学電池の模式図を以下に示す。標準圧力下、298Kにおいて半電池Rの硫酸亜鉛の初濃度を0.1 mol/L、半電池Lの硫酸亜鉛の初濃度をc1 mol/Lとする。
スクリーンショット 2020-06-10 15.22.05.png

なお、亜鉛半電池の反応は次式で表される。(E °は標準電位を表す)。
スクリーンショット 2020-06-10 15.22.11.png

また、硫酸亜鉛は水中では完全に電離し、その活量は濃度に等しいとする。この場合の亜鉛半電池の電極電位E (単位V)は温度298 Kでは次式で表される。
スクリーンショット 2020-06-10 15.22.16.png

この化学電池に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。


1 この電池はダニエル電池である。
2 c1=0.01のとき、半電池Lがアノード(負極)となる。
3 この電池の標準起電力は0 Vである。
4 半電池Lと半電池Rの硫酸亜鉛濃度が等しくなった状態の起電力は-0.76 Vである。
5 c1=0.01のとき、この電池の起電力は約+0.059 Vである。

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問 100    

 e-REC解説

解答 2、3

本問のように電池を構成する電極や電解質溶液の種類は同じで、濃度だけが異なることにより起電力を生じる電池を濃淡電池という。濃淡電池では、電荷を持つ同一物質の異なる濃度の溶液である半電池を連結させ、これにより生じる電気ポテンシャル差から起電力を得る。

1 誤
この電池は濃淡電池である。

2 正
濃淡電池では、両液濃度を同じにしようと濃度が高い方では濃度を低くするため、溶液中のZn2+がZnとなり析出する還元反応が起こる。(①式)
スクリーンショット 2020-06-10 15.28.24.png
また、濃度が低い方では濃度を高くするため、電極のZnがZn2+となり溶出する酸化反応が起こる。(②式)
スクリーンショット 2020-06-10 15.29.06.png
この電子(e)の動きにより電流がカソード(正極)からアノード(負極)へ流れる。
c1=0.01のときの電子の動きと電流の動きを以下に示す。
スクリーンショット 2020-06-10 15.32.11.png
上記より、半電池Lがアノード(負極)になる。

3 正
標準起電力は2つの半電池の標準電極電位の差で表される。本問では2つの亜鉛半電池を連結させており、正極負極ともに亜鉛を用いているため標準電極電位は等しく、標準起電力は0 Vとなる。

4 誤
濃淡電池において、2つの半電池の溶液濃度が等しくなった場合には、各電池で酸化還元反応は起こらず、電子の動きおよび電流の動きが生じなくなる。そのため、起電力は0 Vである。

5 誤
濃淡電池の起電力は、正極の溶液濃度と負極の溶液濃度によって、決定され③式で表される。
スクリーンショット 2020-06-10 15.33.16.png
正極の硫酸亜鉛の濃度は0.1 mol/L、負極の硫酸亜鉛の濃度は0.01 mol/Lであるため、起電力は0.0295 Vとなる。

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