令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 176

Pin Off  未ブックマーク    |  |  |   
問 176  正答率 : 64.6%

 国家試験問題

国家試験問題
ある薬物10 mgを被験者に急速静脈内投与した後、薬物の血中濃度及び尿中排泄量を測定したところ、血中濃度時間曲線下面積は0.20 mg・h/L、尿中総排泄量は2.0 mgであった。一方、この薬物40 mgを同一被験者に経口投与したときの尿中総排泄量は3.0 mgであった。この薬物40 mgを経口投与したときの体内動態の説明として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、この薬物は肝代謝及び腎排泄でのみ消失し、体内動態は線形性を示す。また、肝血流速度は80 L/hとする。

1 全身クリアランスは50 L/hである。
2 肝クリアランスは10 L/hである。
3 肝抽出率は63%である。
4 体循環に移行する薬物量は15 mgである。
5 門脈に移行する割合は90%である。

 解説動画  ( 00:00 / 10:04 )

限定公開

 ビデオコントロール

 解説動画作成を要望!

 解答を選択

問 176    

 e-REC解説

解答 1、4

1 正
全身クリアランスCLtotは①式で表される。
スクリーンショット 2020-06-18 12.39.37.png
設問文より「薬物10 mgを急速静脈内投与、血中濃度時間曲線下面積は0.20 mg・h/L」とあるため、Div=10 mg、AUCiv=0.2 mg・h/Lとなり、CLtotは以下のように求めることができる。
スクリーンショット 2020-06-18 12.39.45.png

2 誤
肝クリアランスCLhは②式で表される。

CLh=CLtot×(1−Ae)…②
(Ae:未変化体の尿中排泄率)

また、未変化体の尿中排泄率Aeは③式で表される。
スクリーンショット 2020-06-18 12.43.08.png
設問文より、「尿中総排泄量は2.0 mg」とあるため、Xu=2.0 mg となりAeは以下のように求めることができる。
スクリーンショット 2020-06-18 12.45.48.png
よって、CLtot=50 L/h、Ae=0.2を②式に代入すると、CLhは以下のように求めることができる。

CLh=50 L/h×(1−0.2)=40 L/h

3 誤
肝抽出率Ehは④式で表される。
スクリーンショット 2020-06-18 12.47.50.png
ここで、CLh=40 L/h、設問文よりQh=80 L/hとあるため、④式に代入すると、Ehは以下のように求めることができる。
スクリーンショット 2020-06-18 12.47.56.png

4 正
体循環に移行した薬物量は尿中未変化体総排泄量と比例するため、⑤式で表される。

Xiv:Xu iv=Xpo:Xu po…⑤
(Xiv:静脈内投与時の体循環に移行した薬物量、Xu iv:静脈内投与時の尿中未変化体総排泄量、Xpo:経口投与時の体循環に移行した薬物量、Xu po:経口投与時の尿中未変化体総排泄量)

静脈内投与時の体循環に移行した薬物量Xivは、静脈内投与量Divと等しいため、Xiv=Div=10 mgとなる。また、設問文より「静脈内投与後、尿中総排泄量は2.0 mg」、「経口投与したときの尿中総排泄量は3.0 mg」とあるため、Xu iv=2.0 mg、Xu po=3.0 mg となり、Xpoは以下のように求めることができる。

10 mg:2.0 mg=Xpo:3.0 mg
Xpo=15 mg

5 誤
門脈に移行した薬物量(X)のうち、肝初回通過効果をまぬがれた割合(Fh)が、体循環に移行する(Xpo)ため、経口投与された薬物のうち、門脈に移行する薬物量Xは、⑥式で表される。
スクリーンショット 2020-06-18 12.55.36.png
また、肝初回通過効果をまぬがれた割合FhはFh=1−Ehで表すことができ、⑥式を変形すると⑦式となる。
スクリーンショット 2020-06-18 12.55.42.png
したがって、Xpo=15 mg 、Eh=0.5を⑦式に代入すると、Xは以下のように計算される。
スクリーンショット 2020-06-18 12.55.48.png
経口投与量40 mgのうち、門脈に移行する薬物量Xは、30 mgであるため門脈に移行する割合は、30 mg /40 mg=0.75=75%である。
スクリーンショット 2020-06-18 12.59.57.png

 Myメモ - 0 / 1,000

e-REC 過去問解説システム上の [ 解説 ] , [ 解説動画 ] に掲載されている画像・映像・文章など、無断で複製・利用・転載する事は一切禁止いたします