令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 177

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問 177  正答率 : 48.6%

 国家試験問題

国家試験問題
粒子径のみが異なる大小2種の単分散球形固体粒子から成る粉体Ⅰ及びⅡを、同一仕込み量(W0)で一定温度の水にそれぞれ投入し攪拌した。溶解せず残っている量(Wt)を経時的に測定したところ、図のような関係が得られた。この結果の説明に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、溶解はシンク条件において拡散律速で進行するものとし、試験条件は同じとする。
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1 粉体Ⅰと粉体Ⅱの粒子の溶解現象は、いずれもHixson−Crowellの式に従う。
2 粉体Ⅰの粒子は、粉体Ⅱの粒子よりも粒子径が大きい。
3 粉体Ⅱの粒子は、溶解に伴って粒子の形状が球形から不規則形に変化している。
4 粉体Ⅰの粒子の溶解速度定数は0.006 g1/3/minである。
5 試験開始60分後において、溶解した粉体のⅡの量は0.36 gである。

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問 177    

 e-REC解説

解答 1、2

Hixson−Crowellの式は、シンク条件下(溶解度Cs≫溶液濃度C)において、同一粒子径の球形粒子がその形状を維持したまま溶出する場合に成立し、①式で表される。

スクリーンショット 2023-10-04 10.38.36.png

粉体粒子がHixson−Crowellの式に従って溶解する場合、W01/3-Wt1/3を時間tに対してプロットすると、原点を通る右上がりの直線が得られ、その傾きが溶解速度定数k(g1/3・min)となる。

スクリーンショット 2023-10-04 10.38.44.png

1 正
設問中の図よりW01/3−Wt1/3とtが比例関係であり、設問文より粒子の溶解はシンク条件下において進行するため、粉体Ⅰと粉体Ⅱの粒子の溶解現象は、いずれもHixson−Crowellの式に従う。

2 正
図の直線の傾きは溶解速度定数kであり、粉体Ⅰの粒子は粉体Ⅱの粒子よりも傾きkが小さいため溶解性が小さい。
溶解速度定数kは、拡散定数Dを用いて②式で表すことができる。

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また、拡散定数Dは拡散のしやすさを表す値であり、③式で表される。

スクリーンショット 2023-10-04 10.39.01.png

③式より、拡散定数Dは粒子半径rと反比例の関係にあり、②式より拡散定数Dと溶解速度定数kは比例関係となる。よって、粒子半径rと溶解速度定数kは反比例の関係となる。したがって、粉体Ⅰの粒子は粉体Ⅱの粒子よりも傾きkが小さいため、粒子半径rは大きく、粒子径が大きい。

3 誤
Hixson−Crowellの式は、シンク条件下同一粒子径の球形粒子がその形状を維持したまま溶出する場合に成立する。そのため、Hixson−Crowellの式に従って溶出する粉体Ⅱの粒子は、溶解に伴って粒子の形状が球形から不規則形に変化せず、球形を維持したまま溶出する。

4 誤
粉体Ⅰの粒子の溶解速度定数kは、①式を変換した④式より求めることができる。

スクリーンショット 2023-10-04 10.39.14.png

なお、粉体Ⅱの粒子の溶解速度定数kも、④式より求めることができる。

スクリーンショット 2023-10-04 10.39.20.png

5 誤
溶解した量は、W0-Wtで表されるため、試験開始60分後においてW0-Wt=0.36 gとなるかを確認する。
粉体Ⅱの溶解速度定数kは、0.006 g1/3/minであり、①式に代入すると、

スクリーンショット 2023-10-04 10.47.21.png

と計算されるが、得られた0.36 g1/3は(W01/3-Wt1/3)であり、0.36 gとは単位が異なり、溶解した量を示すものではない。
なお、本問では「粉体Ⅰ及びⅡを、同一仕込み量(W0)で一定温度の水にそれぞれ投入し攪拌した。」とあるが、仕込み量(W0)の値が不明であり、溶解した量(W0-Wt)を求めることはできない。
仮に仕込み量(W0)を1gとした場合であれば、⑤式より、

スクリーンショット 2023-10-04 10.39.33.png

と計算できるため、溶解した量(W0-Wt)は、1-0.26 = 0.74 gとなる。

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