令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 200,201

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問 200  正答率 : 46.6%
問 201  正答率 : 45.5%

 国家試験問題

国家試験問題
75歳女性。肝臓がんの疑いで外来通院中。今回、超音波検査で結節性病変を認めたため、精査目的で入院し、造影剤を用いた画像検査を行うことになった。ヨード造影剤にアレルギーがあるため、新しく採用となった超常磁性酸化鉄製剤であるフェルカルボトラン(注)を用いて画像を撮影することになった。図は肝臓におけるフェルカルボトラン投与前後の画像を模式的に示す。
(注)フェルカルボトラン:細粒子化した酸化鉄(Fe2O3)をデキストランやその誘導体などでコーティングしてコロイド化したもの。
スクリーンショット 2020-06-27 9.07.31.png

肝臓における作用機序:本剤は投与後、肝臓内ではクッパー細胞に取り込まれ、色の濃い画像が得られる。肝腫瘍組織ではクッパー細胞が欠如しているため、色の薄い画像が得られる。図中では、信号強度の強い方が黒く表されている。

問200(実務)
この患者を担当する研修医から、薬剤部のDI(医薬品情報)担当者に、この薬剤についての質問があった。DI担当者の説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ヘモクロマトーシス等の鉄過剰症の患者には禁忌である。
2 メトホルミンなどビグアナイド系薬剤と併用禁忌である。
3 MRI(magnetic resonance imaging)において使用する薬剤である。
4 腎機能が低下している患者には使用できない。
5 ショックやアナフィラキシーは起きない。


問201(物理・化学・生物)
この患者に行った画像検査法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 酸化鉄(Fe2O3)の代わりに、酸化マグネシウム(MgO)を用いることも可能である。
2 波長1〜10 pmの電磁波が使用される。
3 ドップラー効果により臓器の運動を観察することも可能である。
4 高磁場中でラーモア歳差運動の周波数と同じ周波数の電磁波を照射し、原子核を励起させる。
5 放射線被ばくに注意する必要はない。

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問 200    
問 201    

 e-REC解説

問200 解答 1、3

本患者に新しく採用となった超常磁性酸化鉄製剤であるフェルカルボトランはMRI用肝臓造影剤である。

1 正
ヘマクロマトーシス等の鉄過剰症の患者は、フェルカルボトランに含まれる鉃により症状が悪化するおそれがあるため禁忌となっている。

2 誤
フェルカルボトランにビグアナイド系薬剤との相互作用などは報告されていない。なお、メトホルミンなどビグアナイド系薬剤と併用に注意が必要な薬剤にはヨード造影剤がある。

3 正
前記参照

4 誤
フェルカルボトランは、腎性全身性線維症の発症リスクがなく、腎機能に与える影響が極めて少ない。なお、MRI用造影剤のガドリニウム造影剤は、腎性全身性線維症の発症リスクが高く、重篤な腎障害のある患者には禁忌とされている。

5 誤
フェルカルボトランの重大な副作用としてショック、アナフィラキシーショックが報告されているため、観察を十分に行い、必要に応じ適切な処置を行う必要がある。


問201 解答 4、5

1 誤
MRI用造影剤には、鉄製剤やガドリニウム製剤が用いられるが、マグネシウム製剤は用いられない。

2 誤
MRIで用いられる電磁波は、波長1 mから10 m程度のラジオ波である。

3 誤
ドップラー効果とは、動きのある物体に超音波を照射すると、反射波は物体の速度に比例して周波数がずれる現象のことである。超音波診断法では、この効果を利用して血管内を流れる赤血球の流れの向きや速度(血流速度)を測定している。よって、MRIでドップラー効果は利用できない。

4 正
ラーモア歳差運動の周波数と同じ周波数をラーモア周波数という。MRIでは、高磁場中で生体組織中に含まれる基底状態の水素原子核にラーモア周波数に等しいラジオ波を照射し、励起状態になった原子核がエネルギーを放出して基底状態に戻る時間(緩和時間)が組織や臓器によって違うことを利用して画像化する診断法である。

5 正
MRIで用いる電磁波は、ラジオ波であるため、放射線被ばくに注意する必要はない。なお、放射線被ばくに注意を要する画像診断法として、X線CT(X線)、PET(β+線)、SPECT(γ線)などがある。

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