令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 310,311,312,313

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問 310  正答率 : 71.3%
問 311  正答率 : 76.3%
問 312  正答率 : 93.7%
問 313  正答率 : 90.0%

 国家試験問題

国家試験問題
46歳男性。2年前に甲状腺全摘出手術を受けた後、レボチロキシンナトリウム錠内服による薬物治療を行なっている。通院間隔が6ヶ月に一度に変更になり、180日分の処方箋を持って来局した。この患者の薬剤服用歴を確認すると、過去に服用忘れや、自己判断で服用を中断していた可能性が疑われた。長期処方への変更に伴い、薬剤師が服薬アドヒアランスに関連した注意事項を説明することになった。

問310(実務)
この処方薬の服用を中断することによって起こりうるものとして、薬剤師が説明すべき症状はどれか。2つ選べ。

1 徐脈
2 収縮期血圧上昇
3 冷感
4 発汗過多
5 体重減少


問311(法規・制度・倫理)
近隣に専門クリニックが開院したこともあり、甲状腺治療薬の長期処方が増加している。一方で、この患者のように、継続治療が必要なのに、服用を忘れたり、勝手に中断する患者が多い。
そこで、長期処方の患者に対して、薬剤師が電話によるフォローアップを行うことで、患者の服薬アドヒアランスの改善又は症状悪化の早期発見につながるかを検討することにした。
この漠然とした臨床疑問を解決可能な臨床研究にするために、まずはPECO(注)又はPICO(注)を使って疑問を構造化することにした。この研究のPECO又はPICOの組み合わせとして、適切なのはどれか。1つ選べ。

スクリーンショット 2020-06-29 11.16.28.png

(注)PECOやPICOは疑問を構造化するための手法の1つ。PはPatient、EはExposure、IはIntervention、CはComparison、OはOutcomeの頭文字のこと。


問312(法規・制度・倫理)
作成したPECO又はPICOに従って、実際に介入研究を行うことになった。この研究を実施するにあたり薬剤師が注意すべき点として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 対象患者を二群に分けた比較試験を行う場合、郡分けは患者の希望を優先する。
2 研究を開始する前に、あらかじめ倫理審査の手続きを行う必要がある。
3 研究資金が必要な場合、利益相反の開示をしないことを条件に製薬会社から提供を受ける。
4 対象患者に対して研究内容を文書で説明すれば、参加同意を取得する必要はない。
5 研究参加は自由意志によるもので、参加しなくても不利益にならないことを患者に説明する。


問313(実務)
この介入研究において、レボチロキシンナトリウム錠の服薬アドヒアランスを評価する方法として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 薬剤服用歴から、調剤した薬剤種類数を調べる。
2 患者に持参してもらった残薬数から服薬率を算出する。
3 患者から飲み忘れの有無を聞き取る。
4 処方した医師に処方意図を確認する。
5 併用薬との相互作用の有無を調べる。

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問 310    
問 311    
問 312    
問 313    

 e-REC解説

問310 解答 1、3

本患者は、2年前に甲状腺全摘手術を受けており、甲状腺ホルモンが分泌されなくなっている。そのため、治療としては、甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシンナトリウム錠)の内服を行なっている。甲状腺ホルモンは、基礎代謝亢進させる作用及びカテコールアミン感受性を増大させる作用がある。基礎代謝亢進、カテコールアミン感受性増大によって、頻脈、収縮期血圧上昇、暑がり、発汗、体重減少などといった生理作用が現れる。本患者のように、服用忘れや服用中断によって、甲状腺ホルモンの真逆の生理作用(徐脈、収縮期血圧低下、寒がり、発汗減少、冷感、体重増加など)が現れる。

1 正
甲状腺ホルモン製剤の服用中断により、甲状腺ホルモンが有するカテコールアミン感受性増大作用が現れなくなり、心機能が抑制され徐脈が起こる。

2 誤
甲状腺ホルモン製剤の服用中断により、甲状腺ホルモンが有するカテコールアミン感受性増大作用が現れなくなり血管収縮作用が低下し収縮期血圧の低下(低血圧)が起こる。

3 正
甲状腺ホルモン製剤の服用中断により、甲状腺ホルモンが有する基礎代謝亢進が現れなくなり、組織での酸素消費量が減少し熱産生量が低下することで低体温(寒がり)や発汗減少が起こる。

4 誤
解説3参照。

5 誤
甲状腺ホルモン製剤の服用中断により、甲状腺ホルモンが有する基礎代謝が低下し、体重増加が起こる。


問311 解答 2

臨床での疑問を構造化する手法の1つとしてPECO、PICOを用いる。必要とするエビデンスを収集するために、以下の4項目を明確にする。

スクリーンショット 2020-06-29 11.16.38.png

今回の患者でいうと以下のようになる。

スクリーンショット 2020-06-29 11.16.44.png


問312 解答 2、5

1 誤
群分けは患者の希望は優先されない。一般に対象患者を2群に分けて比較試験を行う場合、バイアスを回避するために無作為(ランダム)に群分けを行う。

2 正
人を対象とする医学研究を実施する際、あらかじめ認定臨床研究審査委員会に倫理審査の手続きを行う必要がある。

3 誤
臨床研究は、何かしらの利益相反を伴う可能性があるため、研究資金が必要な場合、開示が必要になる。

4 誤
介入研究を行う際、被験者に対して文書による説明を行い、被験者が理解し、被験者が文書による同意をしなければならない。よって、参加同意を取得する必要はないというのは不適切である。

5 正
介入研究を行う際、研究参加は被験者の自由意志によるもので、参加しない場合でも不利益にならないことを患者に説明する。


問313 解答 2、3

患者における問題点は、長期処方による服用忘れや自己判断による服用の中断である。アドヒアランスを評価するためには、患者に持参してもらった残薬数から服薬率を算出することや、患者から飲み忘れの有無を聞き取ることが大切である。これらの内容を聞くことで、患者がどれくらい積極的に服薬しているのかが判断できる。

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