令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 232,233

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問 232  正答率 : 86.3%
問 233  正答率 : 80.9%

 国家試験問題

国家試験問題
7歳男児。昨夜から40℃の発熱があり、小児科診療所でインフルエンザと診断され、下記の薬剤が処方された。2日前に両親もインフルエンザと診断され、高熱で寝込んでいるため、近所に住んでいる70歳の祖母が男児の処方せんを持って薬局を訪れた。祖母は1年前にインフルエンザの予防接種を受けており、現時点で発熱等の症状はない。
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問232(実務)
薬剤師が、本剤の使用に際して祖母に行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 吸入直後にうがいをしないと、舌にカンジダという菌が増えることがあります。
2 吸入が上手くいかない場合には、ブリスター内の薬を飲ませてください。
3 本剤は吸湿性が高いので、吸入器を操作してブリスターに穴をあけるのは、吸入する直前にしてください。
4 この薬剤を吸入し、平熱に戻った場合には、直ちに薬の使用を中止してください。
5 平熱に戻っても、しばらくはウイルスの感染力が残っているため、他人に感染させる可能性があります。


問233(衛生)
この祖母からインフルエンザの予防接種について薬剤師に質問があった。インフルエンザの予防接種に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 祖母は1年前にインフルエンザの予防接種を受けているので、今年はインフルエンザの予防接種を受ける必要はない。
2 祖母は70歳なので、インフルエンザの定期予防接種の対象者となる。
3 祖母が、この後にインフルエンザの予防接種を受けて健康被害を生じた場合、予防接種健康被害救済制度による救済措置を受けることができる。
4 インフルエンザHAワクチンは生ワクチンなので、ワクチンの接種によりインフルエンザを発症することがある。
5 インフルエンザはB類疾病なので、集団予防に重点がおかれている。

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問 232    
問 233    

 e-REC解説

問232 解答 3、5

1 誤
本剤は、免疫抑制作用をもたないため、舌にカンジダ菌が増えることはない。よって、本剤吸入直後にうがいをする必要はない。なお、免疫抑制作用をもち、口腔カンジダを発症する恐れがあるため、吸入直後にうがいをする必要がある薬剤は、副腎皮質ステロイドである。

2 誤
本剤は、吸入によりインフルエンザの感染・増殖部位である気道に直接薬剤を到達させることで効果を発揮する。また、ザナミビル水和物の消化管吸収率は非常に悪く、経口投与による効果はほとんど得られない。したがって、本剤の使用説明書通りに服用するよう指導する。

3 正

4 誤
本剤吸入後、平熱に戻ったとしても、体内にウイルスが残っている可能性があり、他人に感染させてしまう恐れがある。したがって、平熱に戻ったとしても医師の指示通り5日間服用するように指導する。

5 正
解説4参照


問233 解答 2、3

予防接種には予防接種法で定められた予防接種(定期接種)と任意の予防接種(任意接種)がある。さらに、定期接種はA類疾病とB類疾病に分けられ、A類疾病は主に集団の感染予防を目的としており、B類疾病は主に個人の感染予防を目的としている。
また、予防接種法では、予防接種の対象疾病の他に対象者(年齢)を定めている。したがって、予防接種法の対象疾患であっても、対象年齢以外での接種は任意の予防接種として扱われる。なお、予防接種法に定められている予防接種の実施主体は市町村長となっている。
以下に予防接種法で規定する疾病とその対象年齢に関する表を示す。
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1 誤
インフルエンザの予防接種の効果が有効な期間は約5ヶ月間であり、一度の接種で永久に免疫が獲得できるわけではない。さらに、インフルエンザウイルスは、毎年のように抗原が変異してしまうため、一生のうち何度も感染する可能性がある。したがって、本問の患者の祖母は1年前にインフルエンザの予防接種を受けているが、今年も予防接種を受ける必要がある。

2 正
予防接種法において、インフルエンザはB類疾病に分類されており、対象者の年齢は原則65歳以上である。本問の祖母の年齢は70歳であるため、インフルエンザの定期予防接種の対象者となる。

3 正
本問の祖母は、予防接種法で定められた予防接種(定期接種)を受けており、これにより健康被害が生じた場合、予防接種健康被害救済制度による救済措置を受けることができる。なお、任意の予防接種により健康被害が生じた場合、機構法に定める副作用健康被害救済制度または生物由来製品感染等被害救済制度による救済措置を受けることができる。

4 誤
インフルエンザHAワクチンは不活化ワクチンであり、病原体を不活化したものが使われているため、ワクチンの接種によりインフルエンザを発症することはない。

5 誤
インフルエンザはB類疾病なので、個人予防に重点がおかれている(前記参照)。

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