令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 116

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問 116  正答率 : 49.5%

 国家試験問題

国家試験問題
輸血を必要としている患者(幼児)から採血し、単離した赤血球を用いて図1(a)に示すような血液型判定の検査(i)、(ⅱ)を行ったところ、結果は図1(b)のようになった。さらに確認試験として、患者の血清を用いて図2(a)に示す検査(ⅲ)を行った。患者は低ガンマグロブリン症などの疾患は有していない。患者の母親の血液型はA型Rh(-)型である。検査(ⅲ)の結果と、患者の父親の血液型に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。なお、血液型の遺伝は、メンデルの遺伝の法則に従うものとする。

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1 検査(ⅲ)の結果は、図2(b)の②となる。
2 検査(ⅲ)の結果は、図2(b)の③となる。
3 検査(ⅲ)の結果は、図2(b)の①又は④となる。
4 父親のABO血液型は、B型又はAB型である。
5 父親のABO血液型は、O型である。
6 父親のRh血液型は、Rh(-)型である。

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問 116    

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解答 2、4

ヒトの血液型にはいくつかの分類があるが、代表的なものとしては、ABO型とRh型がある。ヒトのABO式血液型は、赤血球の糖鎖末端構造の違いから、A型、B型、O型、AB型の4つの型にわけられる。本試験においては、赤血球の表面にある物質を「抗原」、血清中の赤血球と反応する物質を「抗体」と考える。
赤血球において、A抗原のみ存在するものをA型、B抗原のみ存在するものをB型、A抗原、B抗原ともに存在するものをAB型、A抗原、B抗原どちらも存在しないものをO型という。
また、抗体は免疫反応の性質上、自己には反応せず自己以外の異物(抗原)に反応するため、血液型により血清中に存在する抗体が異なる。A型は赤血球上にA抗原のみ存在するため、A抗体はもたないが、B抗体をもつ。B型は赤血球上にB抗原のみ存在するため、B抗体はもたないが、A抗体をもつ。AB型は赤血球上にA抗原、B抗原ともに存在するため、A抗体、B抗体ともにもたない。O型は赤血球上にA抗原、B抗原どちらも存在しないため、A抗体とB抗体をもつ。そのため、A抗体がある抗A血清にA型赤血球、B抗体がある抗B血清にB型赤血球などの組み合わせで混ぜ合わせてしまうと、抗体が抗原を攻撃し凝集が起こる。その凝集の有無を利用したABO式血液型の検査法としておもて検査とうら検査がある。おもて検査は赤血球表面の抗原を調べることを目的としており、うら検査は血清中の抗体を調べることが目的である。ABO式血液型は、一般的におもて検査とうら検査が一致すれば決定される。
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また、ヒトのRh式血液型は、C、c、D、E、eにわけられており、このうち、D抗原をもつものをRh(+)、D抗原をもたないものがRh(-)となる。
検査(ⅰ)は、ABO式血液型のおもて検査である。抗A血清に患者サンプルの赤血球を添加したところ凝集は起こらず、抗B血清に患者サンプルの赤血球を添加すると凝集が起こったことから、患者はB型と推測できる(表1参照)。
検査(ⅱ)は、Rh式血液型検査である。抗D血清に患者サンプルの赤血球を添加したところ凝集が起こり、Rhコントロールに患者サンプルの赤血球を添加すると凝集が起こらなかったことから、患者はRh(+)と推測できる。また、Rhコントロールに凝集が認められた場合は、判定保留となる。
検査(ⅲ)は、ABO式血液型のうら検査である。検査(ⅰ)より患者はB型と推定できるため、患者の血清サンプルに、A型赤血球を添加すると凝集が起こり、B型赤血球を添加すると凝集が起こらないことが推測できる(表1参照)(選択肢2)。
また、血液型の遺伝はメンデルの遺伝の法則に従うものとして考える。A型の遺伝子型はAAまたはAO、B型の遺伝子型はBBまたはBO、AB型の遺伝子型はAB、O型の遺伝子型はOOであり、2つ遺伝子がセットで表される。子供は父親と母親から遺伝子を1つずつ引継ぎ遺伝子型が決定される。その際、Oは劣性遺伝であるため、Oではない方の遺伝子の血液型となる(AOならA型、BOならB型)。
本試験においては、A型(AAまたはAO)の母親からB型(BBまたはBO)の子が生まれている。このことからAOの母親からBOの子にOの遺伝子を受け継いだと推測できる。そのため、父親はBの遺伝子をもつ遺伝子型となるため、BB、BO、ABのいずれかである。したがって、父親の血液型はB型またはAB型と推測できる(下図参照)(選択肢4)。
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