令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 124,125,126

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問 124  正答率 : 62.1%
問 125  正答率 : 72.1%
問 126  正答率 : 64.3%

 国家試験問題

国家試験問題
問124〜126
ビタミンKは正常な生理機能の維持に不可欠であり、通常は必要量を食品から摂取している。

問124(衛生)
ビタミンKの摂取及び過不足に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 緑色野菜などのビタミンKを多く含む食品の摂り過ぎによる過剰症が知られている。
2 肝・胆道疾患では、腸管からの吸収が低下すると、不足しやすい。
3 過剰摂取により、頭蓋内出血や消化管出血が起こることがある。
4 母乳中に多く含まれるため、母乳を授乳される新生児には不足は起こりにくい。
5 発酵食品である納豆は、ビタミンK2(メナキノン類)を多く含むので、食品からのビタミンKの供給源の一つである。


問125(物理・化学・生物)
ビタミンKの一種であるビタミンK2(メナテトレノン)に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

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1 ヘキサンには極めて溶けやすいが、水にはほとんど溶けない。
2 光によって分解し、着色が強くなる。
3 還元されるとヒドロキノン型になる。
4 赤外吸収スペクトルにおいて、1500 cm-1付近にカルボニル基に由来する吸収を示す。
5 2−メチル−1,4−ナフトキノンにイソプレン単位で構成されるプレニル基が結合している。


問126(物理・化学・生物)
ビタミンKの生理作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 ビタミンKは、プロトロンビンの生成に関与する。
2 ワルファリンによりビタミンK依存性凝固因子の生成が促進される。
3 ビタミンKは、タンパク質のグルタミン酸残基の修飾に関与する。
4 ビタミンKは、デヒドロゲナーゼの補酵素として働く。
5 ビタミンKは、骨基質タンパク質オステオカルシンの分解を促進する。

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問 124    
問 125    
問 126    

 e-REC解説

問124 解答 2、5

1 誤
天然に存在するビタミンKには、植物により生成されるビタミンK1と細菌などにより生成されるビタミンK2がある。ビタミンK1は、ほうれん草や海藻類などに含まれ、ビタミンK2は、チーズや納豆に含まれるが、ビタミンKを多く含む食品の摂り過ぎによる過剰症は報告されていない。

2 正
ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため、吸収の際に胆汁を必要とする。そのため、肝・胆道疾患では、胆汁酸の生合成低下などが起こるため、腸管からの吸収率が低下し、血中のビタミンKが不足しやすくなる。

3 誤
ビタミンKの過剰症には、吐き気、呼吸困難、血圧低下などがあり、ビタミンKの欠乏症には、消化管出血、血尿などある。特に新生児や乳児では、腸内細菌叢が発達のため、腸内細菌からのビタミンとの供給が不足し欠乏症を生じやすい。

4 誤
母乳中のビタミンKは含量が低いため、人工乳で育った新生児より母乳で育った新生児の方がビタミンK不足になりやすい。そのため、新生児には出生直後からビタミンK2の投与することが望ましい。

5 正
解説1参照


問125 解答 4

1 正しい
ビタミンK2は、構造中にOH基などの親水性基が少なく、疎水性基であるプレニル基をもつため、ヘキサンに極めて溶けやすく、水にはほとんど溶けない。

2 正しい
ビタミンK2は、酸素存在化で光によって分解され、着色が強くなる。

3 正しい
ビタミンK2はキノン型であり、ビタミンKレダクターゼにより還元されるとヒドロキノン型となる。
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4 誤っている
赤外吸収スペクトルにおいて、一般的なケトンのカルボニル基は1700 cm-1に吸収を示し、ビタミンK2はキノン部分に共役構造をもつケトンのカルボニル基を有するため、1650 cm-1に吸収を示す。

5 正しい
ビタミンK2は、2−メチル−1,4−ナフトキノンにイソプレン単位(C5)で構成されるプレニル基が結合た構造である(下図)。
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問126 解答 1、3

1 正
ビタミンKは、血液凝固因子のプロトロンビン生成や骨基質タンパク質のオステオカルシン生成に関与する。ビタミンKは、ビタミン依存性タンパク質の翻訳後修飾におけるビタミンK依存性カルボキシラーゼの補酵素として働き、L−グルタミン酸残基のγ位をカルボキシル化し、γカルボキシグルタミン酸(Gla)残基を形成する。これによりプロトロンビンやオステオカルシンなどの活性体を生成し、働きを示す(下図参照)。
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2 誤
抗凝固薬のワルファリンは、ビタミンKと構造が類似しており、肝臓におけるビタミンK依存性凝固因子の第Ⅱ因子(プロトロンビン)、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、Ⅹ因子)の生成を阻害することにより、血液凝固作用を抑制する。ビタミンKは、還元型ビタミンKとなりビタミンK依存性カルボキシラーゼの補酵素として働き、反応後ビタミンKエポキシドとなるが、ビタミンK及び還元型ビタミンKへと戻る(解説1図参照)。

3 正
解説1参照

4 誤
ビタミンKは、ビタミンK依存性カルボキシラーゼの補酵素として働く。

5 誤
ビタミンKは、オステオカルシンの前駆体に対してビタミンK依存性カルボキシラーゼの補酵素として働き、オステオカルシンの生成を促進する(解説1参照)。

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