令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 178

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問 178  正答率 : 56.9%

 国家試験問題

国家試験問題
図は結晶多形をもつ薬物Aについて15〜35℃におけるリン酸緩衝液中の溶解度(S)の対数値を絶対温度(T)の逆数に対してプロットしたものである。この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、Aの溶解熱は測定温度範囲において一定とする。

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1 図よりⅠ形からⅡ形への転移熱を知ることはできない。
2 薬物AのⅡ形からⅠ形への転移温度は約84℃である。
3 図中のTrは、Ⅰ形結晶の分解開始温度である。
4 Ⅰ形及びⅡ形の結晶とも溶解熱は負の値を示す。
5 Tr以上の温度になると、Ⅰ形結晶の方がⅡ形結晶より高い溶解度を示すことが予測される。

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問 178    

 e-REC解説

解答 2、5

結晶多形とは、化学組成が同じであるにもかかわらず、原子または分子の配列が異なる結晶である。結晶多形は、温度を変化させることにより多形転移を起こし、その時の温度を転移温度という。
設問におけるグラフは、薬物AのⅠ形とⅡ形の結晶多形について、温度と溶解度の関係をファントホッフプロットで表したものであり、次式で表される。

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1 誤
転移熱とは、転移する際に発生または吸収する熱量で、Ⅰ形からⅡ形への転移熱は⊿H-⊿Hで表されるため、図中のⅠ形及びⅡ形の直線の傾きから求めることができる。

2 正
薬物AのⅡ形からⅠ形への転移温度は、Ⅰ型及びⅡ型の直線の交点から求めることができる。設問中の図より、転移温度Trは以下のように求められる。

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3 誤
図中のTrは、Ⅱ形からⅠ形への転移温度であり、Ⅰ形結晶の分解開始温度ではない。

4 誤
グラフの傾きは、-⊿H/2.303Rを示し、Ⅰ形及びⅡ形の結晶ともグラフ自体が負の傾きを示しているため、溶解熱⊿Hは正の値を示す。

5 正
転移温度Trよりも高温(Trより左側)では、Ⅰ型結晶の方がⅡ型結晶よりも溶解度(S)の対数値が大きいため高い溶解度を示す。

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