令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 196,197

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問 196  正答率 : 61.8%
問 197  正答率 : 88.4%

 国家試験問題

国家試験問題
問196〜197
27歳既婚女性。生理が遅れているため、自宅近隣のドラッグストアで、妊娠検査薬を購入した。自宅でこの検査薬の説明書どおりに採尿部に尿をかけて、規定の時間が経過したのち反応を観察した。

※妊娠時にはヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)が分泌されることが知られており、尿中のhCGをイムノクロマトグラフィーで検出する妊娠検査薬が市販されている。

問196(物理・化学・生物)
次の模式図は、この女性が購入した妊娠検査薬の検出メカニズムを表している。以下の記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ

スクリーンショット 2021-06-30 10.26.59.png


抗体A:マウス抗   X   標識抗体
抗体B:マウス抗   X   抗体
抗体C:ウサギ抗   Y   抗体

1 目視で観測するため、抗体Aの標識には主に金コロイドが用いられる。
2   X   に入るのは、hCGである。
3   Y   に入るのは、ウサギIgGである。
4 尿中のhCG濃度が著しく高いとき、判定窓の線が濃く、終了確認窓の線が薄くなったり、消失したりする場合がある。
5 抗体Cの代わりに、hCGを用いることも可能である。


問197(実務)
検査薬を購入した女性は、表示された検査結果をみて、判定窓の線が薄かったことから不安を感じて、購入したドラッグストアに行った。この女性に対する薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2021-06-30 10.30.47.png

1 この女性の月経周期がこれまで順調であったかどうかを確認する。
2 各窓の線が明瞭ではないため、妊娠の可能性はないと説明する。
3 線の色の濃淡によらず、妊娠している可能性があるため、受診を勧める。
4 妊娠初期では、尿中のhCGが少なく陰性となることもあるため、さらに1ヶ月以上あけてからの再検査が必要であると説明する。
5 妊娠していると判断し、母子手帳の交付を申請するよう勧める。

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問 196    
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問196 解答 3

妊娠の検査には、hCGを測定するイムノクロマトグラフィーの原理が利用されている。
妊娠検査薬の測定原理は、抗原抗体を利用した免疫法によるもので、判定窓にはhCGに対する抗体(抗体B)がライン上に塗布されている。この抗体は、hCG以外の異物とは反応しないことが確認されており、検体に含まれるhCGが判定窓の抗体(抗体B)と結合すると試薬の成分によって、赤〜赤紫色に発色する。この発色により抗原の有無を目視により確認することができる。発色させる方法は製品によって異なるが本検査においては、金コロイド法(抗体に着色粒子として金コロイドを結合させたもの)が用いられている。以下に本検査の原理を図示する。
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①採尿部
採尿部に尿をかけると、尿中hCGとマウス抗hCG標識抗体(抗体A)と結合し、抗体A−hCG複合体を形成する。毛細管現象により抗体A−hCG複合体判定窓へと移動する。また、尿中hCGと結合していない抗体Aも判定窓へと移動する。

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②判定窓
①で生成した抗体A−hCG複合体とマウス抗hCG抗体(抗体B)が結合することにより、抗体A−hCG−抗体B複合体を形成し、終了確認窓へと移動する。このとき、標識が発色することでhCGの有無を確認できる。また、尿中hCGと結合していない抗体Aは抗体Bとは結合できないため、終了確認窓へと移動する。

③終了確認窓(コントロールライン)
①でhCGと反応しなかった抗体Aがウサギ抗マウスIgG抗体(抗体C)と結合し、標識が発色することにより検出終了の合図となる。なお、発色が確認されない場合は、検査無効と判定され再検査となる。

1 正しい
前記参照

2 正しい
前記参照

3 誤っている
抗体Cはウサギ抗マウスIgG抗体であり、Yに入るのは、マウスIgGである(前記参照)。

4 正しい
尿中のhCG濃度が著しく高いとき、採尿部において多くのhCGが抗体Aと結合し、抗体A−hCG複合体を形成する。その後、抗体A−hCG複合体と抗体Bが結合し、抗体A−hCG−抗体B複合体を形成し、標識が発色する。この際、通常よりも多くの複合体を形成するため、発色する線が濃くなることがある。

5 正しい
終了確認窓において、抗体Cは抗体Aと結合することが目的であるため、抗体Aと結合することができるhCGの代用は可能である。


問197 解答 1、3

1 正
妊娠周期より尿中hCG濃度が異なるため、検査を受ける時期が重要である。市販の妊娠検査薬は、月経周期が通常の場合、尿中hCG濃度が基準を満たす月経予定日の約10日後から検査可能となる。しかし、月経周期が不規則な場合、月経予定日の約10日後に尿中hCG濃度が基準を満たさないほど低い可能性がある。そのため、本問のように判定窓の線が薄くなってしまうことがある。したがって、「この女性の月経周期がこれまで順調であったかどうかを確認する」ことは適切である。

2 誤
各窓の線が薄くても妊娠の可能性がある。市販の妊娠検査薬では、確定診断をすることができないため、産婦人科への受診を勧める(解説1参照)。

3 正
判定窓の線の濃淡に関わらず妊娠の可能性がある。市販の妊娠検査薬では、確定診断をすることができないため、産婦人科への受診を勧める(解説1参照)。

4 誤
妊娠初期では、尿中hCG濃度が低くなることがあり、妊娠の可能性があるため、数日後に再検査または産婦人科への受診を勧める(解説1参照)。

5 誤
市販の妊娠検査薬では確定診断をすることはできないため、産婦人科への受診が必要となる。一般的に妊娠が確定した後に市町村へ妊娠の届出を行い、母子手帳が交付される。

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