令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 232,233

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問 232  正答率 : 67.3%
問 233  正答率 : 70.7%

 国家試験問題

国家試験問題
問232〜233
5歳男児。身長105 cm、体重21 kg。4日前から下痢が続いており、腹痛を伴う血便が見られた。さらに顔色が悪く、排尿がないことに母親が気づき救急病院を受診した。母親に聴取したところ、7日前に家族で焼肉を食べに行き、両親及び兄も軽い下痢を呈していることが分かった。主治医は、血液検査結果をふまえ、溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断した。

体温37.3℃、脈拍120/分、血圧125/70 mmHg、呼吸数24/分。
尿所見:蛋白(2+)、ケトン体(1+)、潜血(3+)。

問232(実務)
HUSの診断に至った血液検査値に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 クレアチニン値が基準値より高い。
2 LDH値が基準値より高い。
3 血小板数が基準値より少ない。
4 間接ビリルビン値が基準値より低い。
5 AST値が基準値より高い。


問233(衛生)
この疾病及び病因物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 75℃、1分間以上の加熱で死滅する。
2 ヒトからヒトへの感染は起こらない。
3 この疾病の予防には、トキソイドワクチンの接種が推奨されている。
4 牛の肝臓には、この病因物質が存在する可能性があるため、生食用として販売・提供することは食品衛生法で禁止されている。
5 2015〜2019年における病因物質別食中毒発生件数で最も多いのは、この病因物質によるものである。

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問 232    
問 233    

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問232 解答 4

本症例における、「腹痛を伴う血便が見られた」「7日前に家族で焼肉を食べて4日前から下痢が続いている」などの背景より、本男児の健康障害は、腸管出血性大腸菌による食中毒であると考えられる。また、この食中毒は重症化すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併することがある。溶血性尿毒症症候群(HUS)とは、ベロ毒素によって惹起される血栓性微小管障害で、臨床的には以下の3主徴をもって診断する。

【3主徴】
1.溶血性貧血(破砕状赤血球を伴う貧血でHb10 g/dL未満)
2.血小板減少(血小板数15万/μL未満)
3.急性腎傷害(血清クレアチニン値が年齢・性別基準値の1.5倍以上。血清クレアチニン値は小児腎臓学会の基準を用いる)

【随伴症状】
1.中枢神経:意識障害、痙攣、頭痛、出血性梗塞等
2.消化管:下痢、血便、腹痛、重症では腸管穿孔、腸狭窄、直腸脱、腸重積等
3.心臓:心筋傷害による心不全
4.膵臓:膵炎
5.DIC

参考1:溶血性貧血によるLDHの著明な上昇、ハプトグロビン低下、ビリルビン上昇を伴うが、クームス試験は陰性である。
参考2:血清O157 LPS抗体、便O157抗原や便志賀毒素の迅速診断検査、便からの腸管出血性大腸菌の分離等を確定診断の補助とする。
*溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン参照

1 正しい
急性腎障害によりクレアチニン値が上昇する。

2 正しい
溶血性貧血に伴いLDH値が上昇する。

3 正しい
微小血管血栓症に伴い消失性の血小板減少を認める。

4 誤っている
溶血性貧血に伴い間接ビリルビン値が上昇する。

5 正しい
溶血性貧血に伴いAST値が上昇する。


問233 解答 1、4

1 正
腸管出血性大腸菌は、75℃、1分間以上の加熱で死滅する。

2 誤
腸管出血性大腸菌は、ヒトからヒトへ感染する。本感染症は、一般に菌に汚染された飲食物を経口摂取することにより感染するが、感染経路は食品経由だけでなく、感染者の便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによっても感染が成立する。

3 誤
現在、腸管出血性大腸菌感染症の予防を目的としたワクチンは実用化されていない。

4 正
牛の肝臓には腸管出血性大腸菌が存在する可能性があるため、牛レバーの生食の販売・提供は食品衛生法で禁止されている。

5 誤
2015〜2019年における病因物質別食中毒発生件数で最も多いのは、カンピロバクター・ジェジュニ/コリによるものである。

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