令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 304,305

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問 304  正答率 : 72.9%
問 305  正答率 : 70.4%

 国家試験問題

国家試験問題
17歳男性。2日前、体育の授業でバスケットボールをした際、左臀部の痛みを自覚した後に腫れも出現した。左臀部は硬く腫脹し、筋肉内出血が疑われた。受診時の血液検査結果は以下のとおりであった。

(検査値)
赤血球数375×104 /µL、Hb 11.2 g/dL、Ht 35%、白血球数6,800 /µL、血小板数38×104/µL、プロトロンビン時問11.0秒(基準値10〜14)、活性化部分トロンボプラスチン時間72.0秒(基準対照32.2)、出血時間3分30秒(基準値1.0〜5.0分)、AST 62 IU/U、ALT 21 IU/L、LDH350 IU/L、血清クレアチニン値0.6 mg/dL、ADAMTS 13抗体陰性、フィブリノゲン・フィブリン分解産物 3 µg/mL(基準値<5)

本例にデスモプレシン注射液の投与を行ったところ、出血症状の改善が認められた。

問304(病態・薬物治療)
この患者で欠乏している血液凝固因子はどれか。1つ選べ。

1 第Ⅷ因子
2 第Ⅸ因子
3 第Ⅹ因子
4 フィブリノゲン
5 フォン・ヴィレブランド因子


問305(実務)
欠乏している因子の定期補充療法が開始されることになった。両親と本人に対して、薬の説明や生活上注意すべき点を指導するよう、医師から薬剤師に依頼があった。患者への説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 2週間に1回、点滴投与するために外来通院が必要です。
2 出血した際には、1分以内に薬を投与する必要があります。
3 薬の効果が減弱した場合は、インヒビターとよばれる物質が原因です。
4 皮下出血が懸念されるため、予防接種を受けることはできません。
5 ヒト血液由来の製品を使用する場合は、感染症のリスクを完全に排除することができません。

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問 304    
問 305    

 e-REC解説

問304 解答 1

所見として左臀部に筋肉内出血が見られること、血液検査において活性化部分トロンボプラスチン時間延長(内因系凝固異常)がみられることから、本患者は血友病に罹患していると考えられる。
血友病には、内因系凝固第Ⅷ因子の異常により発症する血友病Aと、内因系凝固第Ⅸ因子の異常により発症する血友病Bがある。本患者は、第Ⅷ因子の放出作用を持つデスモプレシン注射液の投与により出血症状の改善が認められたことから、血友病Aに罹患していると考えられる。
なお、ADAMTS 13(フォン・ヴィレブランド因子切断酵素)抗体は、血栓性血小板減少性紫斑病において陽性となる抗体である。


問305 解答 3、5

1 誤
第Ⅷ因子定期補充療法とは、事前に凝固因子製剤を定期的に補充することで自然出血を予防する目的で行われる。本治療法は、医療機関において適切な在宅自己注射教育を受けた患者または家族であれば在宅での投与が可能であるため、点滴投与するために外来通院は必要ない。

2 誤
出血した際に第Ⅷ因子を補充するオンデマンド(出血時補充)療法は、患者の凝固活性の状態をモニタリングしながら、適宜投与量や時間などを調整するため、特に1分以内に投与する必要などはない。

3 正
先天性血友病患者では、補充された第Ⅷ因子製剤を生体内で非自己と認識し、インヒビター(抗第Ⅷ因子抗体)を発現することがある。インヒビターが発現してしまうと、第Ⅷ因子製剤の効果が減弱してしまうため、その場合にはインヒビター中和療法などによる対処が必要となる。

4 誤
皮下注射による予防接種の出血リスクは極めて低いため、血友病患者であっても予防接種を受けることは可能である。ただし、筋肉注射による予防接種は深部出血を助長するおそれがあるため、注意が必要である。

5 正
ヒト血液由来の製品は、特定生物由来製品に分類されており、感染症のリスクが特に高い製剤である。そのため、本製品を使用する場合は、感染症のリスクを完全に排除することは不可能である。

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