令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 296,297

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問 296  正答率 : 59.7%
問 297  正答率 : 84.0%

 国家試験問題

国家試験問題
54歳男性。既往歴なし。咳と嗄声が継続していたが、血痰を認めたため近医を受診した。胸部X線で右肺腫瘤を指摘され、総合病院呼吸器内科を紹介受診した。精査の結果cT2N3M1b Stage Ⅳ Aの非小細胞肺がん(腺がん)と診断された。パフォーマンスステータス(PS)1。治療薬選択にあたり、遺伝子検査が実施された。EGFR遺伝子変異(陰性)、ALK遺伝子転座(陰性)、ROS1遺伝子転座(陽性)、BRAF遺伝子変異(陰性)、PD−L1≧50%。
患者に喫煙歴はなく、機会飲酒のみ。就学中の子供がいるため、外来通院治療を希望している。

問296(実務)
この患者の一次治療薬として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 エルロチニブ
2 クリゾチニブ
3 ゲフィチニブ
4 ペムブロリズマブ
5 アレクチニブ


問297(病態・薬物治療)
この患者の病態及び治療に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 腫瘍マーカーのPSAが上昇している。
2 他臓器への遠隔転移がある。
3 子孫に遺伝する変異が検出された。
4 子供と一緒に散歩することができる。
5 手術による根治が可能である。

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問 296    
問 297    

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問296 解答 2、4

1 誤
エルロチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬であり、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんなどに用いられる。本患者はEGFR遺伝子変異陰性であるため、エルロチニブは用いない。

2 正
クリゾチニブは、ALKおよびROS1チロシンキナーゼ阻害薬であり、ALK融合遺伝子陽性またはROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんなどに用いられる。本患者はROS1遺伝子転座陽性であるため、クリゾチニブでの一次治療を行うことは適切である。

3 誤
ゲフィチニブは、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬であり、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんなどに用いられる。本患者はEGFR遺伝子変異陰性であるため、ゲフィチニブは用いない。

4 正
ペムブロリズマブは、抗ヒトPD−1モノクローナル抗体であり、PD−L1が高発現(50%以上)している非小細胞肺がんなどに用いられる。本患者はPD−L1の発現が50%以上であるため、ペムブロリズマブでの一次治療を行うことは適切である。

5 誤
アレクチニブは、ALKチロシンキナーゼ阻害薬であり、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんなどに用いられる。本患者はALK遺伝子転座陰性であるため、アレクチニブは用いない。


問297 解答 2、4

1 誤
PSA(前立腺特異抗原)は、前立腺がんにおいて上昇する腫瘍マーカーである。本患者は、非小細胞肺がん(肺腺がん)と診断されているため、PSAが上昇している可能性は低い。

2 正
TNM分類は、原発巣の大きさ・浸潤度(T:tumor)、リンパ節転移の有無と広がり(N:lymph node)、遠隔転移の有無(M:metastasis)によりがんの進行度を評価するものであり、他臓器への遠隔転移に関しては、M0(転移なし)M1(転移あり)と表記される。
本患者は、TNM分類がT2N3M1であることから、他臓器への遠隔転移が認められる。

3 誤
本患者で陽性となっているROS1融合遺伝子は、体細胞の遺伝子変異により後天的に生じた遺伝子であり、子孫に遺伝する変異ではない。なお、子孫に遺伝する変異は、先天的に生じる生殖細胞の遺伝子変異である。

4 正
本患者のパフォーマンスステータス(PS)は1であり、肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行や軽作業は可能な状態であるため、子供と一緒に散歩することは可能である。

5 誤
本患者は、TNM分類がT2N3M1で他臓器への遠隔転移が認められる状態であるため、手術による根治は困難である。

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