令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 232,233

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問 232  正答率 : 71.6%
問 233  正答率 : 75.9%

 国家試験問題

国家試験問題
22歳女性。身長160 cm、体重63 kg。女性は肥満と体脂肪率が高いことを気にしており、糖質制限ダイエットによる摂取エネルギー制限が肥満予防に有用であると考えていた。インターネットや書籍の情報を基に糖質制限ダイエットを始めたが、過度の糖質制限は体に良くないと友人から聞き、不安になって近所の薬局を訪れて薬剤師に相談した。

問232(実務)
薬剤師は女性に対し、糖質制限の問題点を説明した上で、食生活の改善と適度な運動を勧め、同時に特定保健用食品を試してみることを提案した。薬剤師が女性に提案した特定保健用食品の成分として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 大豆イソフラボン
2 キシリトール
3 カゼインホスホペプチド(CPP)
4 茶カテキン
5 ラクトトリペプチド


問233(衛生)
この女性の相談をきっかけに、薬局が開催する地域住民向け健康セミナーで糖質制限のことを取り上げることになり、薬局内で勉強会を行った。糖質制限が糖質、タンパク質及び脂質の代謝に及ぼす影響に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 糖質制限を行うと、膵臓からインスリン分泌が亢進する。
2 糖質の摂取不足により血中グルコース濃度の低下が起こると、アミノ酸、乳酸、グリセロールのいずれからもグルコースが作られる。
3 糖質制限が続くと、肝臓で遊離脂肪酸のβ酸化が亢進し、大量に生成したアセチルCoAからケトン体が産生される。
4 肝臓のグリコーゲンは、糖質制限状態ではエネルギー源としては利用されない。
5 脳や神経系の細胞は、グルコースを細胞内に貯蔵しているため、糖質制限の影響を受けにくい。

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問 232    
問 233    

 e-REC解説

問232 解答 4

1 誤
大豆イソフラボンは、骨の健康が気になる方に適する特定保健用食品の関与成分である。

2 誤
キシリトールは、歯を丈夫で健康に保ちたい方に適する特定保健用食品の関与成分である。

3 誤
カゼインホスホペプチド(CPP)は、カルシウムなどのミネラルの吸収を助ける特定保健用食品の関与成分である。

4 正
茶カテキンは、体脂肪が気になる方に適する特定保健用食品の関与成分である。この女性は体脂肪が高いことを気にしているため、茶カテキンを含む特定保健用食品を提案することが適切である。

5 誤
ラクトトリペプチドは、血圧が高めな方に適する特定保健用食品の関与成分である。


問233 解答 2、3

1 誤
糖質制限により血糖値が低下すると、血糖上昇ホルモンであるグルカゴンの分泌は亢進するが、血糖低下ホルモンであるインスリンの分泌は通常抑制される。

2 正
糖質の摂取不足により血中グルコース濃度が低下すると、血糖値の調節のためにグルコースが必要となり、糖新生が促進される。このとき、糖新生の基質として、糖原性アミノ酸、ピルビン酸、乳酸、グリセロールなどがある。

3 正
糖質制限が続くと、糖質以外の栄養素からもエネルギーを生成する働きが生じる。脂肪組織に蓄えられているトリアシルグリセロール(脂質)の分解によって生じるグリセロールと脂肪酸が肝臓に移行した後、脂肪酸のβ酸化(分解)が進行し、大量のアセチルCoA、NADH、FADH2などのATP産生に関与する物質を生成する。
生成したアセチルCoAは一部クエン酸回路に利用されるが、β酸化によって生成するアセチルCoAが過剰に存在するため、クエン酸回路で消費しきれずに一部は異なる代謝経路でケトン体に変換される。

4 誤
糖質制限時の肝臓では、貯蔵多糖であるグリコーゲンが分解されてグルコース−6−リン酸を生成し、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系などの代謝経路を通り、エネルギー産生に利用される。

5 誤
脳や神経系の細胞は、グルコースのみをエネルギー源として利用する。これらの細胞はグルコースやグリコーゲンを細胞内に貯蔵することができないため、糖質制限の影響を受けやすい。

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