令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 266,267

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問 266  正答率 : 55.6%
問 267  正答率 : 65.7%

 国家試験問題

国家試験問題
75歳男性。体重67 kg。農作業中に意識を失い倒れているところを発見され救急外来へ搬送された。痙れん性てんかん重積状態と診断され、ジアゼパム注射液10 mgを投与したが、痙れんが持続したため、ホスフェニトインナトリウム注射液1,500 mgが追加投与された。痙れんが改善した後、ホスフェニトインナトリウム7.5 mg/kg/dayで維持された。経口摂取可能となったため以下の処方に変更され、7日間服用後の患者の定常状態における平均血漿中フェニトイン濃度(Css)は10 µg/mLであった。

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問266(実務)
追加投与されたホスフェニトインナトリウム注射液について薬剤師が医療スタッフに情報提供した内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 強酸性薬剤であるため他剤と配合できません。
2 生理食塩液で希釈して投与してください。
3 静脈内に急速に投与してください。
4 血管痛や壊死が生じやすいため動脈内に投与してください。
5 フェニトインの血中濃度を定期的に測定し副作用に注意してください。


問267(薬剤)
その後、てんかんの痙れん発作が起こったためフェニトイン散10%の投与量を1日3.5 g(フェニトインとして350 mg/day)に増量したところ、Cssは20 µg/mLとなった。フェニトインの代謝速度はミカエリス・メンテン(Michaelis−Menten)式に従うものとすると、この患者におけるミカエリス定数(Km)と最大消失速度(Vmax)に最も近い値の組合せはどれか。1つ選べ。
ただし、フェニトインは主に肝代謝により消失し、定常状態における消失速度は代謝速度に等しいと仮定する。また、フェニトインのバイオアベイラビリティは100%とし、てんかんの発作前後ではKmVmaxは変化しないものとする。

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問 266    
問 267    

 e-REC解説

問266 解答 2、5

1 誤
弱アルカリ性薬剤(pH:8.5〜9.1)であり生理食塩液や、5%ブドウ糖液と混合可能である。

2 正
解説1参照

3 誤
急速に静脈内投与した場合、心停止、一過性の血圧低下、 呼吸抑制等の循環・呼吸障害を起こすことがあるので、用法・用量を遵守する旨を情報提供する。

4 誤
てんかん重積状態に用いる際は、初回投与、維持投与に関わらず静脈内に投与する旨を情報提供する。

5 正
初回投与、維持投与前には、可能な限り血中フェニトイン濃度を測定し、過量投与とならないよう注意すること。なお、初回投与時に神経症状等が発現した患者では、血中フェニトイン濃度の測定を行うとともに、維持投与速度の減速を考慮する旨を情報提供する。


問267 解答 4

Michaelis-Menten式は、①式で表される。

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定常状態では、消失速度と時間当たりの投与量は等しくなるため、①式から②式へ変換できる。

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②式を用いて、フェニトイン散増量前と増量後における患者の定常状態における平均血漿中フェニトイン濃度(Css)と、1日あたりの投与量、バイオアベイラビリティを用いて、最大消失速度Vmaxとミカエリス定数Kmを求める。

<フェニトイン散増量前>
設問より、フェニトイン増量前における、7日間服用後の患者の定常状態における平均血漿中フェニトイン濃度(Css)は10 µg/mL、フェニトイン散10%の1日投与量3 g(フェニトインとして300 mg/day)、フェニトインのバイオアベイラビリティは100%とあることから、Css=10 µg/mL、Dpo/τ=300 mg/day、F=1となり、②式に代入することで③式のように表すことができる。

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<フェニトイン散増量後>
設問文より、フェニトイン増量後における、Cssは20 µg/mL、フェニトイン散10%の1日投与量3.5 g(フェニトインとして350 mg/day)、フェニトインのバイオアベイラビリティは100%とあることから、Css=20 µg/mL、Dpo/τ=350 mg/day、F=1となり、②式に代入することで④式のように表すことができる。

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フェニトイン散増量前のデータ(③)とフェニトイン散増量後のデータ(④)より、最大消失速度(Vmax)とミカエリス定数(Km)を下記の連立方程式より求める。
300 mg(Km+10 µg/mL)=Vmax・10 µg/mL…③
350 mg(Km+20 µg/mL)=Vmax・20 µg/mL…④
したがって、Km=4 µg/mL 、Vmax=420 mg/dayとなる。

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