令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 264,265

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問 264  正答率 : 58.9%
問 265  正答率 : 85.3%

 国家試験問題

国家試験問題
56歳男性。体重72 kg。5ヶ月程前、職場の健康診断で便潜血陽性を指摘され大学病院を受診した。検査の結果、S状結腸がん(StageⅢ)と診断された。約1ヶ月後、S状結腸切除術が施行された。その後、術後補助化学療法としてFOLFOX療法(オキサリプラチン・レボホリナートカルシウム・フルオロウラシル)を入院にて導入することとなった。

問264(薬理)
FOLFOX療法に用いる薬物又はその活性代謝物のいずれかに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 チミジル酸合成酵素を阻害することで、DNAの合成を阻害する。
2 ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することで、活性型葉酸を枯渇させる。
3 プロテアソームを活性化することで、腫瘍細胞の増殖抑制及びアポトーシス誘導を示す。
4 ジヒドロピリミジン脱水素酵素を活性化することで、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する。
5 フルオロデオキシウリジン一リン酸(FdUMP)及びチミジル酸合成酵素と複合体を形成することで、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する。


問265(実務)
FOLFOX療法の2コース目の点滴時に手のしびれの訴えがあったと看護師から薬剤師に連絡があった。薬剤師が患者と面談を行ったところ、「冷たいものに触れるとビリビリとする感覚が前回からあります。また、文字が書きにくい日や、ボタンをかけにくい日が増えてきました。」とのことだった。薬剤師は、このしびれをFOLFOX療法の副作用と考え、症状を改善するために担当医と話し合うこととした。
このしびれの対応に関し、薬剤師が担当医へ提案する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 プレガバリンの追加
2 グラニセトロン塩酸塩の追加
3 フルオロウラシルからパクリタキセルへの変更
4 オキサリプラチンの減量又は休薬
5 レボホリナートカルシウムの増量

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問 264    
問 265    

 e-REC解説

問264 解答 1、5

1 正
フルオロウラシル(5-FU)に関する記述である。5-FUは、代謝されて活性体のフルオロデオキシウリジン一リン酸(FdUMP)となり、チミジル酸合成酵素(TS)と結合し阻害することで、DNA合成を抑制する。

2 誤
メトトレキサートに関する記述である。メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、葉酸から活性型葉酸への還元を抑制することで、チミジル酸合成及びプリン合成系を阻害して、DNA合成を抑制する。

3 誤
プロテアソームを阻害する薬物として、ボルテゾミブがある。ボルテゾミブは、腫瘍細胞のプロテアソームを阻害し、細胞の増殖やアポトーシスを制御する転写因子NF-κBの活性化を阻害することで、腫瘍細胞の増殖抑制及びアポトーシス誘導を示す。

4 誤
ジヒドロピリミジン脱水素酵素を阻害する薬物としてギメラシルがある。ギメラシルは、5-FUの不活化酵素であるジヒドロピリミジン脱水素酵素を阻害することで、5-FUの抗腫瘍効果を増強する。

5 正
レボホリナートに関する記述である。レボホリナートは、細胞内で還元されて5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸となり、5-FUの活性体であるFdUMP及びTSと複合体を形成することで、TSからのFdUMPの解離を遅延させるため、5-FUの抗腫瘍効果を増強する。


問265 解答 1、4

FOLFOX療法開始後に手のしびれ、ビリビリとする感覚、文字が書きにくい、ボタンをかけにくい等の症状を訴えたことから、オキサリプラチンの副作用である末梢神経障害が疑われる。そのため対応としては、原因薬物であるオキサリプラチンの減量又は休薬、神経障害性疼痛治療薬であるプレガバリンの投与が適切である。

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