令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 310,311

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問 310  正答率 : 66.2%
問 311  正答率 : 57.2%

 国家試験問題

国家試験問題
75歳男性。糖尿病及び糖尿病性腎症で在宅療養にて腹膜透析を行い、薬物治療中である。今回、処方1及び処方2が追加された処方箋が発行された。過去の薬歴から処方1及び処方2は初めて処方されたことがわかった。薬剤師が、調剤した薬剤を持って患者宅を訪問した。

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(直近の検査値)
白血球6,500 /µL、赤血球284×104 /µL、Hb 8.6 g/dL、Ht 26%、
MCV 91.5 fL、MCH 30.3 pg、MCHC 33.1%、血小板22.3×104 /µL、
eGFR 8.9 mL/min/1.73 m2、血清鉄45 µg/dL(基準値54〜200 µg/dL(男性))、血清ビタミンB12値と血清葉酸値は基準値内

問310(実務)
処方1、処方2の説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 処方1の薬は常温で保存してください。
2 処方1の薬の副作用として血圧が上昇する場合があります。
3 処方2の薬は腎機能の悪化を予防するお薬です。
4 処方2の薬の使用中は、定期的にHb値を測定する必要があります。
5 Hb値にかかわらず、血清鉄値が基準値内に回復すれば、処方1の薬が中止になります。


問311(法規・制度・倫理)
患者より、処方1の薬のラベルに記載されている「生物」について質問があった。薬剤師の説明の内容として、正しいのはどれか。1つ選べ。

1 感染症のリスクがあるため、処方1の薬の使用に際し、患者からの文書による同意が必要となる。
2 処方1の薬は、植物由来である。
3 処方1の薬は、疾病の治療を目的として、人の細胞に導入され、体内で発現する遺伝子を含有するものである。
4 処方1の薬は、製薬企業に感染症定期報告を義務付けるなど感染症に関する対策が強化されている。
5 処方1の薬を使用した患者の氏名、住所を記録したものを10年間薬局で保存する必要がある。

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問 310    
問 311    

 e-REC解説

問310 解答 2、4

本患者は、糖尿病性腎症でありeGFRが8.9 mL/min/1.73 m2(基準値:90 mL/min/1.73 m2以上)と腎機能が低下していること、赤血球が284×104 /µL(基準値:約400〜500×104 /µL)、Hbが8.6 g/dL(基準値:13〜17 g/dL)、Htが26%(基準値:40〜45%)と低値を示していることから、腎性貧血であると推測される。腎性貧血は、腎機能低下により腎臓でのエリスロポエチン産生が低下することで発症する貧血であり、治療にはエリスロポエチン製剤(ダルベポエチン アルファ注射液など)が用いられる。また、本患者は現在血清鉄が低値を示していることから鉄欠乏性貧血も合併しており、その治療としてクエン酸第一鉄ナトリウム錠も処方されていると考えられる。

1 誤
ダルベポエチン アルファ注射液は、常温(15〜25℃)ではなく、2〜8℃で保存することとなっている。

2 正
ダルベポエチン アルファ注射液を投与することにより血圧上昇を認める場合がある。機序としては、血液粘稠度の増加に伴う末梢血管抵抗の上昇などが考えられる。

3 誤
クエン酸第一鉄ナトリウム錠は体内で欠乏した鉄を補充するための薬である。

4 正
クエン酸第一鉄ナトリウム錠は、適宜血液検査でHb値やフェリチン値等の項目を確認し、効果判定を行いながら投与する。

5 誤
ダルベポエチン アルファ注射液の投与中止の基準として血清鉄値の規定はない。本剤投与中は、定期的にHb値あるいはHt値を確認し、必要以上の造血作用を認めた場合は休薬等の適切な処置をとることとされている。


問311 解答 4

ラベルの「生物」という記載は、医薬品が生物由来製品であることを示している。生物由来製品には、その直接の容器又は直接の被包に、白地に黒枠、黒字で「生物」の文字が記載されていなければならないと医薬品医療機器等法で規定されている。

1 誤
生物由来製品の使用に際し、患者からの文書による同意が必要という規定はない。

2 誤
生物由来製品には、植物由来のものは含まれない。生物由来製品とは、人その他の生物(植物を除く。)に由来するものを原料又は材料として製造をされる医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう。

3 誤
疾病の治療を目的として、人の細胞に導入され、体内で発現する遺伝子を含有するものは、生物由来製品ではなく、再生医療等製品である。

4 正
生物由来製品の製造販売業者は、その製造販売をし、又は承認を受けた生物由来製品又は当該生物由来製品の原料若しくは材料による感染症に関する最新の論文その他により得られた知見に基づき当該生物由来製品を評価し、その成果を厚生労働大臣に定期的に報告しなければならない(感染症定期報告)。

5 誤
生物由来製品(特定生物由来製品又は人の血液を原材料として製造される生物由来製品を除く)に関する記録を、薬局で保存しなければならないという規定はない。生物由来製品及び特定生物由来製品の記録の保存期間は以下の通りである。

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