令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 226,227

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問 226  正答率 : 72.0%
問 227  正答率 : 81.6%

 国家試験問題

国家試験問題
精神神経科の医師から医薬品情報室に、妊婦がリチウム製剤とラモトリギン製剤を服用したときの胎児における心奇形の発生について質問があった。薬剤師が論文を検索し、各製剤の服用による胎児の心奇形発生に関するコホート研究報告を見つけた。論文には下表に示した結果が掲載されていた。

スクリーンショット 2023-08-02 14.33.03.png

問226(衛生)
心奇形発生に及ぼすリチウム製剤の服用の相対危険度はどれか。1つ選べ。

1 0.9
2 1.6
3 2.4
4 3.6
5 4.2


問227(実務)
論文には、薬剤非服用群に対するリチウム製剤又はラモトリギン製剤服用群の相対危険度(傾向スコア分析により補正した値)を服用量別に示した図が載っていた。妊娠中の薬剤服用状況と胎児の心奇形発生に関し、下図を基に薬剤師が医師に説明する内容として誤っているのはどれか。1つ選べ。

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1 リチウム製剤服用量が1日900 mgを超える群では、出生100人あたり6.32人に心奇形が発生しています。
2 リチウム製剤服用量が1日900 mgを超える場合、薬剤非服用群に比べ胎児の心奇形は約4.2倍発生しやすくなると考えられます。
3 リチウム製剤服用量の増加に伴い、胎児の心奇形が発生しやすくなる傾向が認められます。
4 ラモトリギン製剤は、リチウム製剤に比べ胎児の心奇形発生リスクを統計学的に有意に上昇させると考えられます。
5 ラモトリギン製剤服用群全体では、出生100人あたり2.5人に心奇形が発生しています。

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問 226    
問 227    

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問226 解答 3

コホート研究(要因対照研究)は、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる手法である。相対危険度はコホート研究の結果から算出することができ、因果関係の判定に用いられる。

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問227 解答 4

1 正しい
リチウム製剤服用量が1日900 mgを超える群の出生100人あたりの心奇形発生数は6.32人であるため、説明内容として適切である。

2 正しい
リチウム製剤服用量が1日900 mgを超える群の、薬剤非服用群に対する心奇形発生の相対危険度は、6/95÷18,000/1,200,000≒4.2であるため説明内容として適切である。

3 正しい
リチウム製剤服用量が1日600 mg以下、600 mg〜900 mg、900 mgを超えると増加するに伴い、出生100人あたりの心奇形発生数は2.27人、3.78人、6.32人と増加しているため、説明内容として適切である。

4 誤っている
論文に記載されている図は、薬剤非服用群に対するリチウム製剤、又は薬剤非服用群に対するラモトリギン製剤服用群の心奇形発生の相対危険度とその95%信頼区間を服用量別に示したものであるため、薬剤非服用群に対するリチウム製剤、又は薬剤非服用群に対するラモトリギン製剤服用群の統計学的な有意差の有無は示すことはできる。ただし、リチウム製剤服用群とラモトリギン製剤服用群を比較した心奇形発生の相対危険度と95%信頼区間の記載はないため、ラモトリギン製剤のリチウム製剤に対する心奇形発生リスクの統計学的な有意差を判断することはできない。
なお、リチウム製剤服用群の心奇形の発生率は(5+7+6)÷(220+185+95)=0.036であり、ラモトリギン製剤服用群の心奇形の発生率は(20+18+12)÷(900+700+400)=0.025であるため、ラモトリギン製剤はリチウム製剤に比べ胎児の心奇形発生リスクを減少させる傾向はあると考えられる。

5 正しい
ラモトリギン製剤服用群の妊婦数900+700+400=2,000人のうち、心奇形発生数20+18+12=50人であるため、出生100人のうち2.5人に心奇形の発生がみられる。そのため説明内容として適切である。

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