平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 171

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問 171  正答率 : 48.0%

 国家試験問題

国家試験問題
薬物Aは、静脈内投与後、肝臓における代謝と腎排泄によってのみ消失し、正常時は肝クリアランスが全身クリアランスの80%であること、腎排泄は糸球体ろ過のみによって起こることがわかっている。
ある肝疾患患者において、血中アルブミン濃度の低下により薬物Aの血中タンパク非結合形分率が2倍に上昇し、肝クリアランスは4分の1に低下していた。この患者に対し、正常時の2分の1の血中濃度時間曲線下面積(AUC)が得られるようにするには、静脈内投与量を正常時の何%にすればよいか。1つ選べ。ただし、薬物Aの体内動態には、いずれの場合にも線形性が成り立つものとする。

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問 171    

 e-REC解説

解答 1

静脈内投与時の血中濃度時間曲線下面積(AUC)は、①式で表される。
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問題文に「静脈内投与後、肝臓における代謝と腎排泄によってのみ消失し、正常時は肝クリアランスが全身クリアランスの80%」とあることから、正常時の腎クリアランス及び肝クリアランスは、それぞれ②式、③式で表される。
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腎クリアランスは、④式で表される。
スクリーンショット 2016-08-04 16.03.39.png


CLろ過は、⑤式で表される。
スクリーンショット 2016-08-04 16.03.47.png


「腎排泄は糸球体ろ過のみによって起こる」とあることから、腎クリアランスは⑥式で表される。
スクリーンショット 2016-08-04 16.06.19.png


「肝疾患患者において、血中アルブミン濃度の低下により薬物Aの血中タンパク非結合形分率が2倍に上昇」とあるため、⑥式より腎クリアランスは正常時の2倍に上昇したことがわかる。
よって肝疾患時の腎クリアランス(CL腎(肝疾患時))は、⑦式となる。
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肝疾患時の肝クリアランス(CL肝(肝疾患時))は、「正常時の4分の1に低下」とあるため、⑧式となる。
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⑦式、⑧式より、肝疾患時の全身クリアランス(CLtot(肝疾患時))は次式で表される。
スクリーンショット 2016-08-04 16.06.45.png

よって、肝疾患時の全身クリアランスは、正常時の全身クリアランスの60%になる。

本患者の全身クリアランスは正常時の60%となっているため、①式より、この患者に対し正常時の2分の1のAUCが得られるようにするには、静脈内投与量を正常時の30%にする必要がある。

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