平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 204,205

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問 204  正答率 : 68.8%
問 205  正答率 : 44.7%

 国家試験問題

国家試験問題
74歳男性。意識障害のため救急搬送されてきた。水分貯留をともなう高血圧性緊急症と診断され、治療方針を話し合う中でニカルジピン塩酸塩とフロセミドの投与が検討された。

問204(実務)
緊急対応のため注射製剤が選択された。この薬物投与に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 ニカルジピン塩酸塩注射液とフロセミド注射液を注射筒内で混合して投与できる。


2 ニカルジピン塩酸塩は急速静注が推奨される。


3 両剤とも生理食塩液又はブドウ糖注射液で希釈できる。


4 フロセミドは、電解質失調に注意して投与する。




問205(物理・化学・生物)
処方薬の物性を測定する目的で、種々のpHで水溶液(50 µg/mL)を調製し、その5 mLずつに、それぞれ1-オクタノール5 mLを加えてよく振り混ぜ、分配平衡に達した後、水層中の薬物濃度を測定した。以下の表は、処方されたどちらかの薬物の結果である。この結果に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
ただし、この薬物は1-オクタノールとの相互作用を起こさず、また、イオン形薬物の1-オクタノールへの分配は起こらないものとする。
スクリーンショット 2016-09-26 16.25.54.png


1 塩基性薬物ニカルジピンの測定結果である。
2 酸性薬物フロセミドの測定結果である。
3 この薬物の分配係数は、約10である。
4 この薬物のpKaは、約6.0である。

5 この薬物のpKaは、約4.0である。

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問 204    
問 205    

 e-REC解説

問204 解答 3、4

1 誤
ニカルジピン塩酸塩注射液(pH3.5〜4.0)とフロセミド注射液(pH8.6〜9.6)を混合すると、pHの変化により白濁することがあるため、両剤は注射筒内で混合することはできない。

2 誤
高血圧性緊急症の患者にニカルジピン塩酸塩注射液を用いる場合には、点滴静注で投与する必要がある。

3 正
ニカルジピン塩酸塩注射液及びフロセミド注射液は、生理食塩水またはブドウ糖で希釈することが可能である。

4 正
フロセミドは、Na–K–2Cl共輸送体を阻害することにより利尿効果を発揮する。そのため、フロセミドを投与することにより、Na、K、Clの再吸収が抑制され、電解質異常を起こしやすい。


問205 解答 2、5

本設問では、処方薬が溶解している水溶液に1-オクタノールを加え、水溶液のpHを変化させた際の水層中の薬物濃度(µg/mL)を測定している。
測定結果より、pHの増加に伴い、水層中の薬物濃度が上昇していることから、この実験で用いられている処方薬はpHの増加に伴い、イオン形の割合が増加する薬物(酸性薬物)であることがわかる。

1 誤
前記より、この実験で用いられている処方薬は、酸性薬物であることから、設問の測定結果は、塩基性薬物ニカルジピンのものではなく、酸性薬物フロセミドのものであるといえる。

2 正
解説1参照

3 誤
(真の)分配係数は、①式より求めることができる。
スクリーンショット 2016-09-26 16.26.10.png

この実験で用いられている処方薬は酸性薬物であることから、酸性条件下(pH1〜2)では、ほとんど分子形として存在していると考えられる。また、設問の表より、pH1〜2のときの水層中の薬物濃度0.50 µg/mL、1-オクタノール層中の薬物濃度49.5 µg/mLであることがわかる。
これらのことから、①式より(真の)分配係数を以下のように求めることができる。
スクリーンショット 2016-09-26 16.26.20.png


4 誤
酸性薬物のみかけの分配係数は、②式より求めることができる。
スクリーンショット 2016-09-26 16.26.28.png

②式より、pH=pKaのとき、みかけの分配係数=真の分配係数/2となる。
また、みかけの分配係数は、③式より求めることができる。
スクリーンショット 2016-09-26 16.26.38.png

設問の表及び③式より、みかけの分配係数を求めると、みかけの分配係数が真の分配係数/2=49.5に近い値となるのは、pHは4であることから、この薬物のpKaは、約4.0となる。

5 正
解説4参照

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