平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 208,209

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問 208  正答率 : 7.3%
問 209  正答率 : 67.3%

 国家試験問題

国家試験問題
72歳男性。いつもは21時頃に床に入り、夜間に1〜2回トイレに起きることはあるが、眠れていた。1週間前より寝つきが悪くなり、内科を受診した。以下の処方箋が出され、保険薬局に持参した。併用薬はなく、肝機能、腎機能に異常はない。この薬剤を服用するのは初めてである。
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問208(実務)
今回の処方に関する服薬指導として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 眠れるようになれば、いつ服用をやめても構いません。
2 就寝前に飲酒しても構いません。
3 眠れなければ、服用量を増やしても構いません。
4 グレープフルーツジュースを飲むのは避けてください。
5 カフェイン(コーヒー、紅茶など)の摂取は、夕方以降は避けてください。


問209(物理・化学・生物)
ゾルピデム酒石酸塩に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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1 窒素原子アはsp3混成軌道をもつ。
2 破線で囲んだ環は芳香族性をもつ。
3 窒素原子イは、3つの窒素原子のうち最も塩基性が高い。
4 酒石酸の立体異性体は、図に示したものを含めて4つある。
5 この酒石酸は(2R,3R)の立体配置を有する。

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問 208    
問 209    

 e-REC解説

問208 解答 解なし

1 適切・不適切どちらともとれる
ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン系の催眠薬であり、自己判断で急に服用を中止すると、反跳性不眠やいらいら感などの脱離症状があらわれることがあるので、中止する際は徐々に減量するなどの注意が必要である。
ただし、「眠れるようになれば、いつ服用をやめてもよい」という医師との相談の上の指示があれば、設問の指導も適切とも考えられるため、条件設定が不十分で正誤の判断がつかず、国家試験では解なし問題となった。

2 不適切
アルコールは中枢神経抑制作用を有し、ゾルピデムの精神機能・知覚・運動機能等の低下を増強することがある。そのため、本剤服用中は、飲酒を控えるよう指導する必要がある。

3 不適切
ゾルピデムのような催眠薬は、自己判断で増量したり服用を中止したりすると、不眠症が悪化することがあるため、指示通りに服用するよう指導する必要がある。

4 適切
ゾルピデムは、主にCYP3A4(一部CYP2C9、CYP1A2)によって代謝される。グレープフルーツジュースは、小腸のCYP3A4を阻害することでゾルピデムの代謝を抑制し、血中濃度を上昇させることがある。これらのことより、本患者に対してグレープフルーツジュースを飲むのは避けるよう指導する必要がある。

5 適切
本患者は寝つきが悪い状態であり、中枢興奮作用のあるカフェインを摂取すると、さらに寝つきが悪くなる恐れがあるため、就寝時間の近い夕方以降は、カフェインの摂取を避けるよう指導する必要がある。


問209 解答 2、5

1 誤
窒素原子アはsp2混成軌道をもつ。また、窒素原子アの非共有電子対(ローンペア)もsp2混成軌道をもつ。

2 正
破線で囲んだ環は、イミダゾール環とピリジン環が縮合したイミダゾピリジン環であり、二重結合(π結合)4つで8π電子、窒素原子イの非共有電子対が芳香族性に寄与することで2π電子、計10π電子の芳香族性化合物である。

3 誤
ゾルピデムの構造中にある3つの窒素原子のうち、窒素原子アの非共有電子対はsp2混成軌道に収容されており、塩基性を示す。しかし、窒素原子イの非共有電子対はp軌道に収容され芳香族性に寄与するため、塩基性を示さない。また、アミドの窒素原子の非共有電子対も、隣接するカルボニル基との共鳴により非局在化しているため、塩基性をほとんど示さない。よって、最も塩基性が高いのは窒素原子アである。

4 誤
酒石酸には不斉炭素が2つ存在するが、(2R,3S)と(2S,3R)の酒石酸がメソ体の関係性にあるため、立体異性体数は22−メソ体数で3つとなる。
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5 正
この酒石酸は(2R,3R)の立体配置を有する。
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