平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 210,211

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問 210  正答率 : 56.6%
問 211  正答率 : 55.6%

 国家試験問題

国家試験問題
散剤の主薬の処方量が少ない場合には、賦形剤の添加により、かさを増し、分包誤差を極力少なくすることができる。賦形をする際は、一般的に賦形剤として乳糖やデンプンなどを、主薬によって選択して用いる。

問210(物理・化学・生物)
構造式Aで表される乳糖に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2016-09-26 16.40.50.png


1 D-グルコフラノースとD-ガラクトフラノースがグリコシド結合している。
2 還元糖である。
3 グルコシダーゼによって、2つの単糖に分解される。
4 水に溶かすと異性化し、旋光性を失う。
5 β(1→4)結合をもつ。


問211(実務)
以下のうち、一般的に乳糖を賦形剤として用いるのはどれか。2つ選べ。

1 アミノフィリン水和物末
2 イソニアジド末
3 ヨウ化カリウム末
4 β-ガラクトシダーゼ散
5 ロートエキス散

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問 210    
問 211    

 e-REC解説

問210 解答 2、5

1 誤
酸素を含む五員環構造をとる糖をフラノース、酸素を含む六員環構造をとる糖をピラノースという。構造Aの乳糖は六員環構造のβ−D−ガラクトピラノースの1位のアノマー性OH基とβ−D−グルコピラノースの4位のOH基がβ(1→4)結合(β−グリコシド結合)を形成した二糖である。

2 正
乳糖のD−グルコピラノース部分のアノマー炭素はヘミアセタール構造を有し、水溶液中では鎖状構造を介してα−アノマーとβ−アノマーの間で相互変換する。
スクリーンショット 2016-09-26 16.41.22.png

このように、乳糖は、D−グルコピラノース残基が鎖状構造をとることで、アルデヒド基を形成し、還元性を示すことから還元糖に分類される。

3 誤
乳糖はラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)によりβ−D−グルコピラノースとβ−D−ガラクトピラノースに分解される。

4 誤
乳糖を水に溶かすと、D−グルコピラノース部分のアノマー性OH基がα配置であるα−アノマーとβ配置であるβ−アノマーの間で異性化が起こることで旋光度が変化する。なお、この旋光度が変化する現象を変旋光という。

5 正
一般に二糖は、アノマー性OH基と他の糖のいずれかのOH基がグリコシド結合している。乳糖では、β−D−ガラクトピラノースの1位のアノマー性OH基とβ−D−グルコピラノースの4位のOH基がβ(1→4)グリコシド結合している。


問211 解答 3、5

賦形剤は、通常、乳糖、デンプンまたは乳糖とデンプンの混合物が用いられる。一般にデンプンは付着性が大きいため、賦形剤としては乳糖が用いられることが多い。ただし、アミノフィリン水和物末、イソニアジド末、β−ガラクトシダーゼ散は乳糖と混和すると配合変化がおこるため、賦形剤としてデンプンを用いる。

1 誤
アミノフィリン水和物末と乳糖を配合すると色調変化を起こす。そのため、アミノフィリン水和物末の賦形剤には、乳糖でなくデンプンを用いることが望ましい。
なお、アミノフィリン水和物末と乳糖を配合しても、薬効に変化はないため、両剤を配合しても特に問題ない。ただ、両剤を配合すると色調変化を起こし患者に不安を与えることがあるため、アミノフィリンの賦形剤としてデンプンを用いることが望ましい。

2 誤
イソニアジド末と乳糖を配合すると含量低下及び色調変化を起こす。そのため、イソニアジド末の賦形剤には、乳糖でなくデンプンを用いる。

3 正
ヨウ化カリウム末は乳糖と配合変化を起こすとの報告はない。そのため、ヨウ化カリウム末の賦形剤には、乳糖を用いる。

4 誤
β–ガラクトシダーゼ散は乳糖と配合すると乳糖が分解される。そのため、β–ガラクトシダーゼ散の賦形剤には、乳糖でなくデンプンを用いる。

5 正
ロートエキス散は乳糖と配合変化を起こすとの報告はない。そのため、ロートエキス散の賦形剤には、乳糖を用いる。

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