平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 230,231

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問 230  正答率 : 75.3%
問 231  正答率 : 60.0%

 国家試験問題

国家試験問題
少年スポーツクラブの懇親会のバーベキューで、大人3名、子供10名が鶏肉を焼いて食べた。その3日後に、この懇親会に参加した者のうち、子供4名が発熱及び下痢を伴う腹痛を発症した。患児の全員が近医を受診し、点滴静注などの治療を受けた。その後、この食中毒の原因はカンピロバクターと同定された。

問230(実務)
カンピロバクターによる食中毒に罹患した患児の保護者に対する、薬剤師による衛生管理を含めた指導及び助言として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 下痢が続いている間は、糖分や電解質を含むスポーツ飲料の摂取は控える。
2 下痢が続いても、下痢止めは使用しない。
3 鶏肉の内部は汚染されていないので表面を軽くあぶってから、子供に食べさせる。
4 鶏肉を取扱った手を洗ってから、他の食品を取扱う。
5 鶏肉を生食する際には一度冷凍し、カンピロバクターを死滅させる。


問231(衛生)
カンピロバクターによる食中毒に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 カンピロバクターは鳥類等の腸管に常在し、鶏肉を汚染しやすい。
2 野生生物により汚染された環境水を飲むことにより発症することがある。
3 牛レバーの生食により発症することがある。
4 カンピロバクターは乾燥に弱いため、殻の表面が乾燥している鶏卵の生食による発症のリスクは低い。
5 再興感染症の1つに位置づけられている。

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問 230    
問 231    

 e-REC解説

問230 解答 2、4

カンピロバクターは、S字状に湾曲した(桿菌)グラム陰性微好気性菌であり、動物の腸管内に常在している。カンピロバクターは、動物の腸管内に常在していることから、食肉(特に鶏肉)や動物のし尿汚染を受けた飲料水などが原因食品となりうる。カンピロバクターによる食中毒は、少量の菌の摂取でも発症する恐れがあり、2〜7日の潜伏期間を経たのち、発熱、吐き気、腹痛、下痢などの症状が現れる。

1 誤
下痢が続くことによって脱水症状を引き起こす恐れがあるため、水分や電解質を補給する必要がある。よって、下痢が続いている間は、糖分や電解質を含むスポーツ飲料の摂取をするように指導することが適切である。

2 正
下痢止めを使用することによって、病原体の排泄が遅延するため、下痢止めの使用は避けた方が良い。

3 誤
鶏肉の内部もカンピロバクターによる汚染を受けている可能性がある。カンピロバクターによる食中毒を予防するためには、食肉を十分に加熱(中心部を75℃以上で1分間以上加熱)することが重要である。

4 正
鶏肉を取扱うことによって調理器具や手指にカンピロバクターが付着する恐れがある。カンピロバクターが付着した状態で他の食品を取扱うと、他の食品にカンピロバクターが付着し、その食品を摂取することによって食中毒になることもある(二次汚染)。よって、鶏肉を取扱った手を洗ってから、他の食品を取扱うと指導することは適切である。

5 誤
カンピロバクターは、低温細菌であり、4℃以下でも増殖可能であるため冷凍しても死滅しない。


問231 解答 5

1 正しい
問230 前記参照

2 正しい
問230 前記参照

3 正しい
カンピロバクターは牛レバーからも検出される。よって、カンピロバクター食中毒は、牛レバーの生食により発症することがある。

4 正しい
カンピロバクターは乾燥に弱いため、表面が乾燥している鶏卵の生食によるカンピロバクター食中毒のリスクは低い。

5 誤っている
カンピロバクターは新興感染症の1つに位置づけられる。新興感染症は、最近新しく認知され、局地的にあるいは国際的に公衆衛生上の問題となる感染症であり、カンピロバクターの他、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、C型肝炎などがある。なお、再興感染症は、既知の感染症で、既に公衆衛生上の問題とならない程度までに患者が減少していた感染症のうち、近年再び流行し始め、患者数が増加したものであり、マラリア、デング熱、結核などがある。

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