平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 294,295

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問 294  正答率 : 58.8%
問 295  正答率 : 68.2%

 国家試験問題

国家試験問題
61歳女性。閉経している。針生検病理診断の結果、ER(エストロゲンレセプター)陽性、PR(プロゲステロンレセプター)陽性、HER2陰性の湿潤性乳管がんと診断され、乳房温存手術が施行された。術後の放射線療法に加え、薬物療法が開始された。

問294(実務)
この患者の術後薬物療法に用いられる薬剤として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 アナストロゾール
2 ビカルタミド
3 リュープロレリン酢酸塩
4 タモキシフェンクエン酸塩
5 トラスツズマブ


問295(病態・薬物治療)
術後2年経過時に、高カルシウム血症や脊髄圧迫症候など骨転移にともなう合併症状が現れた。
骨転移や、その合併症状に対して用いられる薬剤はどれか。2つ選べ。

1 オマリズマブ
2 メナテトレノン
3 ゾレドロン酸水和物
4 デノスマブ
5 ラロキシフェン塩酸塩

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問 294    
問 295    

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問294 解答 1、4

乳がんの発症および進行には卵胞ホルモン(エストロゲン)やHER2(上皮成長因子2型)過剰発現が関与しており、治療薬選択の際には、ER(エストロゲンレセプター)やPR(プロゲステロンレセプター)などのホルモン受容体およびHER2の発現の有無を確認する必要がある。このうち、ER陽性の場合にはホルモン療法が、HER2陽性の場合にはトラスツズマブやラパチニブが治療に用いられる。またホルモン療法の中でも、エストロゲンが卵巣において産生される閉経前ではリュープロレリン酢酸塩などが、副腎よりアロマターゼを介してエストロゲンが産生される閉経後ではアナストロゾールやタモキシフェンクエン酸塩などが治療に用いられる。
本患者は、ER陽性、HER2陰性の閉経後乳がんであるため、アナストロゾールやタモキシフェンクエン酸塩などが治療に用いられる。

1 適切
アナストロゾールは、副腎におけるアンドロゲンからエストロゲンへの変換酵素であるアロマターゼを阻害し、エストロゲンの生成を抑制することで、閉経後乳がんの治療に用いられる。

2 不適切
ビカルタミドは、前立腺腫瘍組織のアンドロゲン受容体を遮断することで、前立腺がんの治療に用いられるが、乳がんの治療には用いられない。

3 不適切
リュープロレリン酢酸塩は、Gn-RH製剤であり、反復投与により脳下垂体前葉からの性腺刺激ホルモンの産生低下を介してエストロゲンの分泌を抑制することで、閉経前乳がんや前立腺がんの治療に用いられる。なお、本患者は閉経しているため、本剤は治療に用いられない。

4 適切
タモキシフェンクエン酸塩は、乳がん組織におけるエストロゲン受容体をすることで、閉経前および閉経後乳がんの治療に用いられる。

5 不適切
トラスツズマブは、HER2に対するモノクローナル抗体であり、HER2過剰発現が確認された乳がんおよび胃がんの治療に用いられる。なお、本患者はHER2陰性であるため、本剤は治療に用いられない。


問295 解答 3、4

乳がんは骨に転移しやすく、転移巣の破骨細胞活性化により、病的骨折や高カルシウム血症、脊髄圧迫症候などを合併することがある。その際の治療としては、破骨細胞を抑制する作用をもつビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体を用いる。

1 誤
オマリズマブは、ヒト化抗IgEモノクローナル抗体であり、既存治療によってもコントロールできない難治性の気管支ぜん息の治療に用いられる。

2 誤
メナテトレノンは、ビタミンK2製剤であり、骨粗しょう症における骨量・疼痛の改善に用いられる。

3 正
ゾレドロン酸水和物は、ビスホスホネート製剤であり、破骨細胞のアポトーシスの誘導や機能を喪失させることで、悪性腫瘍による高カルシウム血症や固形がん骨転移および多発性骨髄腫による骨病変の治療に用いられる。

4 正
デノスマブは、ヒトRANKLに結合するヒト型IgGモノクローナル抗体であり、破骨細胞の形成を抑制することで、固形がん骨転移および多発性骨髄腫による骨病変の治療に用いられる。

5 誤
ラロキシフェン塩酸塩は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であり、骨のエストロゲン受容体刺激による骨吸収抑制作用を有するため、骨粗しょう症の治療に用いられる。

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