平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 298,299

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問 298  正答率 : 68.2%
問 299  正答率 : 75.8%

 国家試験問題

国家試験問題
67歳男性。16年前にHIV感染が判明し、ジドブジン(ZDV)とラミブジン(3TC)による治療を開始したが、7年前から服薬を自己中断していた。6年前の結核罹患を契機にロピナビル・リトナビル(LPV・RTV)配合剤を追加して治療を再開したが、その2年後から再び服薬を自己中断していた。全身倦怠感が徐々に進行し、血液検査(CD4陽性リンパ球、HIV-RNA定量)の結果、3TC・アバカビル硫酸塩配合剤とLPV・RTVによる治療を開始することになった。

問298(実務)
本症例と治療薬について適切なのはどれか。2つ選べ。

1 3TCは単独投与しても薬剤耐性を起こさない。
2 結核罹患の一因として、服薬の自己中断が考えられる。
3 全身倦怠感の悪化は、典型的なZDVの副作用である。
4 無症候性となった場合、血液検査の必要はない。
5 肝機能が低下した場合、配合剤ではなく個々の薬剤の投与を考慮する。


問299(病態・薬物治療)
HIV感染症について正しいのはどれか。2つ選べ。

1 母乳を介した感染はしない。
2 無症候期は、感染後、数週間である。
3 一過性のインフルエンザ様症状が感染初期(感染後数週間)に起こる。
4 進行した場合、CD4陽性リンパ球数が減少する。
5 日和見感染が、感染初期に起こる。

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問 298    
問 299    

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問298 解答 2、5

1 誤
HIVは、感染初期から変異による薬剤耐性を生じやすく、抗HIV薬の単独投与ではその可能性が高くなる。そのため、HIVの治療では抗HIV薬の単独投与は行わず、多剤併用療法が行われる。

2 正
結核罹患はHIV感染症の指標疾患であり、本患者がZDVと3TCの服薬を自己中断したことでCD4陽性リンパ球が減少したため発症したと考えられる。

3 誤
本患者の全身倦怠感はZDVの服薬を自己中断した後に出現しているため、ZDV の副作用とは考えにくい。なお、本患者に出現している全身倦怠感は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の特徴的な症状であり、HIV感染症の進行によるAIDSの発症によるものと考えられる。

4 誤
HIV感染症は、無症候期でもCD4陽性リンパ球数が500/mm3以下の患者では治療が強く推奨され、350/mm3以下の患者では直ちに治療を開始すべきであるとされている。そのため、無症候期であっても血液検査を行い、治療開始時期を検討する必要がある。

5 正
配合剤には、配合薬剤それぞれが固定の用量で含有されているため、配合剤の投与では、一部の成分のみの用量調節ができない。そのため、3TC・アバカビル硫酸塩配合剤においてどちらかの成分のみを用量調節する際には、個別の3TC製剤及びアバカビル硫酸塩製剤に切り替えて用量調節しなければならない。
アバカビル硫酸塩は、肝代謝型の薬剤であり、肝機能が低下した場合には血中濃度が増加するおそれがある。そのため、肝機能が低下した場合、個々の薬剤に切り替えてアバカビル硫酸塩の用量を調節する必要がある。


問299 解答 3、4

HIV感染症は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染によってCD4陽性T細胞が減少し、数年から十数年かけて免疫力が徐々に低下していく疾患である。なお、HIV感染症の進行により免疫不全状態に陥り、様々な合併症(日和見感染症や脳症など)が出現した状態をAIDSという。

1 誤
HIVの感染経路には、母乳や産道および胎盤を介した母子感染、精液や膣分泌液を介した性感染、血液感染などがある。

2 誤
HIV感染症の無症候期は、感染後数年から十数年続く。

3 正
HIV感染の数週間後は、発熱や咽頭痛、関節痛などのインフルエンザ様症状が現れることが多い。

4 正
前記参照

5 誤
日和見感染症はHIV感染から数年後のAIDSの発症期にみられる症状である。

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