令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 119,120,121

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問 119  正答率 : 62.8%
問 120  正答率 : 67.4%
問 121  正答率 : 76.0%

 国家試験問題

国家試験問題
健康な成人における糖質の消化・吸収過程について、消化管における糖質の消化のプロセス(図1)、小腸粘膜上皮細胞におけるグルコースの輸送過程(図2)及び糖尿病治療薬アカルボースの構造式(図3)を示した。以下の問いに答えよ。
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問119(衛生)
消化管における糖質の消化・吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 酵素Aは膵臓ランゲルハンス島B細胞で合成・分泌される。


2 酵素Bは小腸粘膜上皮細胞の管腔側の膜に存在する。


3 ラクトースは、グルコースとガラクトースがα1→4結合で結合している。


4 マルトースやラクトースは小腸で直接吸収されない。


5 アカルボースは、酵素Bと酵素Cの活性を阻害する。




問120(物理・化学・生物)
小腸粘膜上皮細胞における糖の輸送過程に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 ガラクトースは、単純拡散により細胞膜を通過して細胞内に取り込まれる。


2 輸送体Dは、細胞内外のNaの濃度勾配を利用して、グルコースを細胞内に取り込む。


3 輸送体Dは、マルトースの輸送体としても働く。


4 輸送体Eは、ATPの加水分解により得られたエネルギーを利用して、グルコースを毛細血管側に輸送する。


5 輸送体Fは、ATPの加水分解により得られたエネルギーを利用して、K(イオン①)を細胞内に、Na(イオン②)を細胞外に輸送する。




問121(物理・化学・生物)
α−グルコシダーゼ阻害薬であるアカルボースに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
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1 マルトース型の部分構造が含まれる。


2 破線で囲んだ部分の結合様式はβ1→4結合である。


3 水に溶けやすい。


4 へミアセタール構造をもつため、フェーリング試液による沈殿反応を示す。


5 p−ベンゾキノン試液による呈色反応を示す。

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問 119    
問 120    
問 121    

 e-REC解説

問119 解答 2、4

1 誤
酵素Aはα−アミラーゼであり、膵臓の腺房細胞で合成され、十二指腸に外分泌されるため、膵臓ランゲルハンス島B細胞で合成・分泌されるわけではない。なお、膵臓ランゲルハンス島B細胞はインスリンを合成し、血液中に内分泌する。

2 正
酵素Bはマルターゼであり、小腸粘膜上皮細胞の管腔側の細胞膜(微絨毛膜)に存在する。マルターゼは、二糖類のマルトースを単糖類のグルコースに分解する。

3 誤
ラクトースはグルコースとガラクトースがβ1→4結合で結合した二糖類である。また、ラクトースは酵素C(ラクターゼ)により分解される。

4 正
マルトースやラクトースなどの二糖類やデンプンなどの多糖類は直接吸収されず、単糖に分解されてから吸収される。その際、マルトースはグルコース、ラクトースはグルコースとガラクトースに分解されてから吸収される。

5 誤
アカルボースはα−グルコシダーゼ阻害する糖尿病治療薬である。そのため、α−グルコシダーゼであるマルターゼを阻害することにより、二糖類から単糖への分解を抑制することにより単糖の吸収を抑えることができるが、β−ガラクトシダーゼであるラクターゼを阻害することはできない。


問120 解答 2、5

1 誤
ガラクトースやグルコースは、SGLT−1(輸送体D)により、小腸粘膜上皮細胞管腔側の細胞膜から細胞内へと能動輸送によりされる。そのため、単純拡散により細胞膜を通過して細胞内に取り込まれるわけではない。

2 正
SGLT−1(輸送体D)は、Na,K−ATPaseにより形成された小腸上皮細胞内外のNaの濃度勾配を利用して、細胞外のNa+と共にグルコースやガラクトースを能動的に細胞内に取り込む(二次性能動輸送)。

3 誤
SGLT−1(輸送体D)は、Naと共に単糖(グルコースやガラクトース)を共輸送する輸送担体である。そのため、マルトースのような二糖を共輸送する担体ではない。

4 誤
GLUT−2(輸送体E)は、小腸粘膜上皮細胞の毛細血管側の細胞膜に存在し、促進拡散によりグルコースを細胞内から毛細血管側へと輸送される。

5 正
Na,K−ATPase(輸送体F)は、ATPの加水分解により得られたエネルギーを利用して、3個のK+(イオン①)を細胞内に、2個のNa(イオン②)を細胞外に輸送する。


問121 解答 2

1 正しい
マルトースは、2つのグルコースがα1→4結合で結合した二糖類である。図3のアカルボースは、2つのグルコピラノース(グルコースの6員環構造)がα1→4結合で結合している構造を含むため、マルトース型の部分構造が含まれる(下図参照)。
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2 誤っている
破線で囲んだ部分の結合様式はα1→4結合である(解説1参照)。β1→4結合を持つ糖には、セロビオースやラクトースなどがある(下図参照)。
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3 正しい
アカルボースは、構造中に親水基のOH基を多くもつ。そのため、アカルボースは水に極めて溶けやすい。

4 正しい
フェーリング試液は、還元糖の定性試験に用いられる。構造中に還元性を示す官能基(アルデヒド基、α−ケトール基など)がある場合、フェーリング試液と反応することにより沈殿反応を示す。
アカルボースの右端のグルコピラノースは、ヘミアセタール構造をもち、水溶液中では、以下の3つの構造が平衡状態にある。
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以上より、アカルボースは水溶液中で還元性を示すアルデヒド基をもつ。そのため、アカルボースは、フェーリング試液を還元し、赤色沈殿が生じる。

5 正しい
本品に水及びp−ベンゾキノン試液を加え、煮沸・冷却するとき、液は赤褐色を呈する。

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