令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 180

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問 180  正答率 : 35.4%

 国家試験問題

国家試験問題
図は、pH7.4、37℃の緩衝液中におけるある弱酸性薬物の加水分解に対するシクロデキストリン添加の影響を示したものである。本実験条件において、この薬物とシクロデキストリンはモル比1:1で複合体を形成する。

スクリーンショット 2022-06-16 12.22.26.png

ここで、kfは薬物自体の分解速度定数(2.26×10-3 h-1)、kobs(h-1)は見かけの薬物分解速度定数(h-1)、K1:1は複合体の安定度定数((mol/L)-1)、kcは複合体中の薬物分解速度定数(h-1)、[CD]tはシクロデキストリンの総濃度(mol/L)としたとき、次のような関係式が成立する。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2022-08-01 11.05.25.png

1 この薬物との複合体の安定度定数は190 (mol/L)-1である。


2 複合体中の薬物の加水分解速度定数は6.02×10-1 h-1である。


3 シクロデキストリンの添加濃度の上昇にしたがい、この薬物の見かけの加水分解速度定数は増大する。


4 シクロデキストリンは、この薬物の加水分解に対して安定化効果を示す。


5 複合体形成によるこの薬物の安定化効果はpHによって変化しない。

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問 180    

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解答 1、3

設問中の式を①式とする。

スクリーンショット 2022-06-16 12.22.41.png

①式より、グラフの傾きは1/K1:1(kfkc)=-1.4((mol/L)・h)…②であり、
切片は1/(kfkc)=-266 h…③となる。

1 正
③式を変換すると④式となる。
kfkc=-1/266 (h-1)…④
また、②式に④式を代入し、複合体の安定度定数K1:1を求める。
1/K1:1(-1/266)=-1.4
K1:1=190 (mol/L)-1

2 誤
設問文の「kfは薬物自体の分解速度定数(2.26×10-3 h-1)」より、kf=2.26×10-3 h-1であり、②式に代入し、複合体中の薬物分解速度定数kcを求める。
1/(2.26×10-3kc)=-266
kc≒6.02×10-3 h-1

3 正
設問中のグラフより、シクロデキストリンの添加濃度[CD]tの上昇に伴い、グラフの縦軸1/(kfkobs)は大きくなるため、見かけの加水分解速度定数kobsは大きくなることがわかる。従って、シクロデキストリンの添加濃度の上昇にしたがい、この薬物の見かけの加水分解速度定数は増大する。

4 誤
選択肢3より、シクロデキストリンは、この薬物の加水分解を促進する。

5 誤
設問中の実験データからは、複合体形成によるこの薬物の安定化効果はpHによって変化するかは不明である。

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