令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 198,199

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問 198  正答率 : 64.6%
問 199  正答率 : 43.9%

 国家試験問題

国家試験問題
60歳男性。骨折治療のため入院中。逆流性食道炎のため、1ヶ月前からオメプラゾール腸溶錠20 mgを1日1回1錠、朝食後に服用している。患者の服薬アドヒアランスは良好であったが、症状の改善がみられなかった。そのため、医師から他に有効なプロトンポンプ阻害薬(PPI)がないか薬剤師に相談があった。薬剤師がPPIと薬物代謝酵素CYP2C19に関する文献などを調べたところ、図のデータを見つけた。当院には、他にPPIとしてランソプラゾール腸溶性口腔内崩壊錠30 mgとエソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20 mgの採用がある。この患者の肝機能及び腎機能は正常であり、ヘリコバクター・ピロリ抗体検査結果は陰性である。
エソメプラゾールは、オメプラゾールの光学異性体のS 体のみの薬物である。

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問198(実務)
図から薬剤師が考えた内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 PMの可能性があるので、エソメプラゾールに変更する。


2 PMの可能性があるので、ランソプラゾールに変更する。


3 Hetero−EMの可能性があるので、エソメプラゾールに変更する。


4 Hetero−EMの可能性があるので、ランソプラゾールに変更する。


5 Homo−EMの可能性があるので、エソメプラゾールに変更する。


6 Homo−EMの可能性があるので、ランソプラゾールに変更する。




問199(物理・化学・生物)
オメプラゾール腸溶錠は、オメプラゾールのR 体とS 体の混合物である。その有効性はR 体とS 体で異なるため、その血中濃度をR 体とS 体とに分別して定量することによって有用な情報が得られる。血中濃度測定における液-液抽出法による血液の前処理とHPLCによる分別定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

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1 液-液抽出法では、R 体とS 体の分配係数が異なるので、個別に抽出率を求めておく必要がある。


2 液-液抽出法では、試料のpHを塩基性にすると抽出率が向上する。


3 液-液抽出法に用いる有機溶媒としてアセトニトリルが有用である。


4 HPLCでは、移動相にキラル化合物のラセミ体を添加することによってR 体とS 体を分離できる。


5 HPLCでは、光学活性物質や特定の高分子によって修飾した固定相を用いることによってR 体とS 体を分離できる。

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問 198    
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問198 解答 5

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃酸分泌を抑制することで胃内のpHを高くする作用がある。図のデータはCYP2C19の遺伝子多型によるPPIの薬剤別胃内pH抑制効果を示しており、縦軸の「24時間あたりの胃内pH>4の割合(%)」が高いほど、薬効が十分にあらわれていることがわかる。図のデータより、Homo−EM、Hetero−EM、PMのオメプラゾールの効果を比較すると、Homo−EMにおいて効果が低いことがわかるため、本患者は、オメプラゾールの代謝が亢進したCTP2C19のHomo−EMの可能性が考えられる。よって、本患者の場合、Homo−EM群で最も効果があらわれている、エソメプラゾールに変更することが最も適切である。


問199 解答 2、5

液-液抽出法(溶媒抽出法)は、混合しない2種類の液体中(水と水と二層に分離する有機溶媒)に試料溶液を加え、十分に混和した後、静置して二層に分離させ、目的物質を有機溶媒層に抽出させる方法である。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による光学分離法には、キラル固定相法、キラル移動相法、ジアステレオマー誘導体化法がある。以下、それぞれの分離法の詳細である。
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1 誤
オメプラゾールのR 体とS 体は鏡像異性体の関係であるため、物理的性質・化学的性質が同じとなり、分配係数が等しい。よって、個別に抽出率を求めておく必要はない。

2 正
液-液抽出法において、試料の分子形分率を大きくすることにより抽出率を向上させる方法がある。オメプラゾールは塩基性薬物のため、pHを塩基性にすると分子形の割合が増加し、抽出率は向上する。

3 誤
液-液抽出法は、水と混和しない有機溶媒(ジエチルエーテルや1−ブタノールなど)を用いるため、水と混和するアセトニトリルは用いない。

4 誤
キラル移動相法により、移動相に添加した光学活性物質であるキラルセレクターと試料との複合体形成能がエナンチオマー間で異なることを利用して、R 体とS 体を分離できる(前記参照)。

5 正
キラル固定相法により、キラルカラム(キラルセレクターを固定化したカラム)を用いて、キラルセレクターと試料との親和性がエナンチオマー間で異なることを利用して、R 体とS 体を分離できる(前記参照)。

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