平成25年度 第98回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 200,201

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問 200  正答率 : 66.1%
問 201  正答率 : 61.2%

 国家試験問題

国家試験問題
50歳男性。躁病のため3年前より処方1の薬剤を服用しており、状態は良好であった。最近、高血圧と診断され、処方2の薬剤を併用しながら、低塩食を続けていたが、食欲不振、振戦、傾眠が増強してきたので、近医で診察を受けた。
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問200(実務)
食欲不振、振戦、傾眠が増強した理由として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 低塩食により血清中リチウムイオン濃度が上昇した。


2 トリクロルメチアジド錠服用により血清中リチウムイオン濃度が上昇した。


3 アムロジピンベシル酸塩錠服用により血清中リチウムイオン濃度が上昇した。


4 低塩食により血清中リチウムイオン濃度が低下した。


5 トリクロルメチアジド錠服用により血清中リチウムイオン濃度が低下した。


6 アムロジピンベシル酸塩錠服用により血清中リチウムイオン濃度が低下した。




問201(物理・化学・生物)
治療薬物モニタリング(TDM)に指定されている血清中リチウムイオン濃度の測定には原子吸光光度法が用いられる。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 原子吸光光度法は、光が原子蒸気層を通過するとき、励起状態の原子が特有波長の光を吸収する現象を利用する。


2 原子吸光光度法の光源部には主にキセノンランプが用いられる。


3 原子吸光光度法の試料原子化部にはフレーム方式、電気加熱方式、冷蒸気方式がある。


4 定量に際しては、干渉やバックグラウンドを考慮する必要がある。


5 リチウム原子は、黄色光を選択的に吸収する。

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問 200    
問 201    

 e-REC解説

問200 解答 1、2

躁病の治療薬である炭酸リチウム(Li2CO3)の中毒に関する問題である。炭酸リチウムは有効血中濃度と中毒域が近いため、治療薬物モニタリング(TDM)を行う。中毒の初期症状として、食欲不振、振戦、傾眠(周囲からの刺激があれば覚醒するがすぐ意識が混濁する状態のこと)などが見られる。
低塩食により食塩(NaCl)の摂取が減ると体内のナトリウムイオン(Na)濃度が低下するため、ナトリウムイオン(Na)の腎臓における排泄抑制、再吸収促進が起こる。同じ一価のカチオンであるリチウムイオン(Li)についても同様であり、リチウムイオンの体内貯留を起こしやすい状態となる。また、ナトリウムイオン(Na)の排泄を促進するチアジド系利尿薬やACE阻害薬などは、腎臓でのリチウムイオンの再吸収を亢進し血中濃度を上昇させる可能性があるため注意が必要である。


問201 解答 3、4

1 誤
原子吸光光度法の原理は、基底状態の原子が光を吸収して励起状態に遷移することである。その吸収する度合いを測定して、定量を行う分析法である。これにより、血中のリチウムイオン濃度が測定できる。

2 誤
光源には中空陰極ランプや放電ランプが用いられる。キセノンランプは、蛍光分光光度計に用いられる光源である。

3 正
一般的な金属元素の原子化にはフレーム方式や電気加熱方式が利用され、水銀の原子化には冷蒸気方式が用いられる。

4 正
定量には、検量線法や内標準法などが用いられるが、試料中に共存する目的元素以外の成分によって起こる(化学)干渉やバックグラウンドを考慮する必要がある。

5 誤
リチウムが吸収する波長は671 nm(赤色)である。励起状態の原子が光を放出して基底状態になるため、放出する光と吸収する光の波長は同じであると考えられる。

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