平成27年度 第100回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 204,205

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問 204  正答率 : 82.3%
問 205  正答率 : 48.3%

 国家試験問題

国家試験問題
悪性リンパ腫の患者に対し、注射用シクロホスファミド水和物950 mgを500 mLの生理食塩液に溶解し、90分間かけて点滴静注することになった。

問204(実務)
調製を担当する薬剤師が注意することとして、適切でないのはどれか。1つ選べ。

1 ガウン、手袋(二重)、マスク、キャップなどで皮膚を覆った状態で、安全キャビネット内で調製する。


2 バイアルに生理食塩液を加えるときは、予めシリンジで相当する空気を送り込んでバイアル内を陽圧状態にしておく。


3 溶解操作を行ったときには、必ず目視で完全に溶解したことを確認する。


4 シリンジは、注射針が外れるのを防ぐため、ルアーロック式が望ましい。


5 調製によって生じたゴミは、チャック付のビニール袋等に入れる。



問205(物理・化学・生物)
調製作業後、安全キャビネット周辺のシクロホスファミドの飛散状況を液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いて確認することになった。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2016-07-08 18.58.32.png


1 本薬物は難揮発性物質であるので、トリメチルシリル(TMS)化などの誘導体化が必要である。


2 本薬物は、大気圧イオン化法であるエレクトロスプレーイオン化(ESI)法によりイオン化される。


3 塩素の安定同位体は、整数原子量が35と37のものがほぼ3:1で存在するため、本薬物の分子イオンピークをMとすると、質量数がM、M+2、M+4の3本のピークは、強度比約1:2:1で観測される。


4 本薬物の定量に重水素標識体を内標準物質として用いる際には、その放射性があるため、使用場所が制限される。


5 本薬物のような低分子の測定では、タンデム型質量分析計を用い、プリカーサーイオン(前駆イオン)とそこから生成するプロダクトイオンを選択することで、薬物に対する選択性が向上する。

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問 204    
問 205    

 e-REC解説

問204 解答 2

1 適切
シクロホスファミドは、抗悪性腫瘍薬である。抗悪性腫瘍薬の混合調製の際には、曝露(ケミカルハザード)を防止するために、ガウン、手袋(二重)、マスク、キャップなどで皮膚を覆った状態で、安全キャビネット内で調製する。

2 不適切
バイアルに生理食塩液を加えるときに、予めシリンジで相当する空気を送り込んでバイアル内を陽圧状態にしていると、抜針時に薬液が飛散し、ケミカルハザードを起こすことがある。そのため、バイアル内に生理食塩水を加えるときは、バイアル内を陽圧状態にしないように注意する必要がある。

3 適切
シクロホスファミドを溶解したときは、必ず目視で完全に溶解したことを確認する必要がある。

4 適切
抗悪性腫瘍薬混合調製時には、薬液がこぼれないように、ルアーロック式のシリンジを用いることが望ましい。

5 適切
抗悪性腫瘍薬混合時に発生したゴミには、薬液が付いていることがあるため、チャック付きのビニール袋等に入れてから廃棄する。


問205 解答 2、5

1 誤
液体クロマトグラフィー(LC)を用いて、薬物を検出する場合、試料の揮発性を上昇させるトリメチルシリル(TMS)化は不要である。なお、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、難揮発性物質を検出する場合、TMS化を必要とする場合がある。

2 正
液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)でシクロホスファミドを検出する場合、そのイオン化法として、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法が用いられる。
ESI法:常圧(大気圧)下において、キャピラリーから放出される液体試料が電圧によって液滴となり、タンパク質のような生体高分子や高極性低分子化合物などをイオン化する方法

3 誤
塩素の安定同位体は、整数原子量が35(35Cl)と37(37Cl)のものがほぼ3:1で存在するため、本薬物のように塩素を2分子含む同位体ピーク(分子イオンピークをMとすると、M、M+2、M+4)は、強度比約9:6:1で観測される。
なお、臭素の安定同位体は、整数原子量が79(79Br)と81(81Br)のものがほぼ1:1で存在するため、臭素を2分子含む同位体ピーク(分子イオンピークをMとすると、M、M+2、M+4)は、強度比約1:2:1で観測される。

4 誤
重水素(2H)は安定同位体であるため、放射性を有しない。そのため、重水素標識体を用いても使用場所に制限はない。

5 正
タンデム型質量分析計とは、2台の質量分析計を接続した質量分析計である。タンデム型質量分析では、1台目の質量分析計でプリカーサーイオン(前駆イオン)を選択し、2台目の質量分析計でプリカーサーイオンから生成するプロダクトイオンを検出する。よって、タンデム型質量分析を行うと、プリカーサーイオン(前駆イオン)を選択することができるため、特定のイオンの構造解析が可能となる。

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