令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 212,213

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問 212  正答率 : 57.0%
問 213  正答率 : 52.7%

 国家試験問題

国家試験問題
問212〜213
78歳男性。肺がん末期のため、在宅で緩和ケアを受けている。痛みに対して以下の薬剤が処方されていた。本日、薬剤師が患者宅を訪問したところ、痛みの評価は、NRS(数値スケール)で6となり、痛みが増強してきた。そこで、薬剤師が医師に痛みの三段階除痛ラダーに基づき、オピオイド鎮痛薬の追加を提案することにした。
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問212(実務)
この患者にこの段階で追加する薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。

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問213(物理・化学・生物)
追加された鎮痛薬はオピオイド受容体に作用する。オピオイド受容体には、内因性リガンドとして、以下に示したメチオニンエンケファリンなどのペプチドが知られている。内因性リガンドと受容体との相互作用を考えたとき、追加された鎮痛薬の受容体との相互作用及びファーマコフォアに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
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1 塩基性窒素をもち、生体内でプロトン化されて受容体のカルボキシラートイオンとイオン結合する。


2 塩基性窒素原子と炭素数2あるいは3個の炭素鎖で結合した芳香環をもつ。


3 カルボキシ基をもち、受容体のグアニジノ基とイオン結合する。


4 代謝されてフェノール性ヒドロキシ基を生じ、受容体と水素結合する。


5 芳香環をもち、受容体のベンゼン環とπ-π相互作用する。

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問 212    
問 213    

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問212 解答 1、3

がん性疼痛に用いる鎮痛薬を選択する際には、WHO三段階除痛ラダーに従って適切な効力の鎮痛薬を選択する。WHO三段階除痛ラダーでは、まず軽度な痛みに対しては、第一段階としては非オピオイド系鎮痛薬(アセトアミノフェン、セレコキシブ(選択肢2)インドメタシン(選択肢4)など)を選択する。鎮痛効果が不十分な軽度から中等度の強さの痛みに対しては、第二段階として弱オピオイド系鎮痛薬(コデインリン酸塩水和物(選択肢1)、トラマドール(選択肢3)など)を選択し、必要に応じて非オピオイド系鎮痛薬を併用する。さらに中等度から高度の強さの痛みに対しては、第三段階として強オピオイド系鎮痛薬(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなど)を選択し、必要に応じて非オピオイド系鎮痛薬を併用する。
また、患者が感じている痛みを数字で評価する指標としてNRS(数値スケール)があり、10段階で以下のように表す。
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以上より、本患者は非オピオイド系鎮痛薬であるアセトアミノフェンを服用しているにもかかわらずNRSが6で中程度の痛みを感じていると評価できることから、WHO三段階除痛ラダーに従った鎮痛薬の選択は、第二段階の弱オピオイド系鎮痛薬のコデインリン酸塩水和物(選択肢1)、トラマドール(選択肢3)を選択することが適切である。

1 正
コデインリン酸塩水和物の構造であり、弱オピオイド系鎮痛薬として利用される。そのため、WHO三段階除痛ラダーに従うと、第二段階で選択される鎮痛薬となる。したがって、鎮痛薬の追加提案として適切である。

2 誤
セレコキシブの構造であり、非オピオイド系鎮痛薬として利用される。そのため、WHO三段階除痛ラダーに従うと、第一段階で選択される鎮痛薬となる。したがって、鎮痛薬の追加提案として適切ではない。

3 正
トラマドール塩酸塩の構造であり、弱オピオイド系鎮痛薬として利用される。そのため、WHO三段階除痛ラダーに従うと、第二段階で選択される鎮痛薬となる。したがって、鎮痛薬の追加提案として適切である。

4 誤
インドメタシンの構造であり、非オピオイド系鎮痛薬として利用される。そのため、WHO三段階除痛ラダーに従うと、第一段階で選択される鎮痛薬となる。したがって、鎮痛薬の追加提案として適切ではない。

5 誤
アミトリプチリン塩酸塩の構造であり、鎮痛補助剤として利用される。鎮痛補助剤はWHO三段階除痛ラダーの各段階で必要に応じて追加選択されるが、本問題では、オピオイド系鎮痛薬の追加を提案することにしているため、追加提案として適切ではない。


問213 解答 3

オピオイド受容体に対するファーマコフォアは、①フェノール性OH基、②芳香環、③芳香環からC原子が2,3個離れたN(N原子のカチオン)である。このファーマコフォアは内因性リガンドのメチオニンエンケファリンが有しており、チロシン残基がそれに相当する。ファーマコフォアにおける受容体の相互作用等を以下に示す。
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①:フェノール性OH基がオピオイド受容体の陰性部と水素結合する
②:芳香環のπ電子がオピオイド受容体の芳香環とπ電子によるπ−π相互作用する
③:塩基性を示すN原子がプロトン化されN+となり、オピオイド受容体のカルボキシラートイオンとイオン結合する

また、前問の追加提案したコデインリン酸塩水和物、トラマドールが生体内で代謝を受けると、ベンゼン環に結合するメトキシ基は脱メチル化により、フェノール性OH基となることにより、このファーマコフォアを有する(下図参照)。

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