令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 216,217

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問 216  正答率 : 66.4%
問 217  正答率 : 60.7%

 国家試験問題

国家試験問題
68歳男性。2週間前から労作時呼吸困難が出現し、増悪傾向のため医療機関を受診した。心房細動、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全と診断され、酸素投与も必要なため入院加療となった。その後、軽快し、以下の処方で治療されている。

スクリーンショット 2020-06-29 11.06.39.png

身体所見・検査値
心エコー心嚢液なし、右心不全所見なし、LVEF45%、CCr 23mL/min、ヘマトクリット値32.9%、血清アルブミン3.3 g/dL、血清クレアチニン2.25 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.4 mEq/L、BNP 452.7 pg/mL、心拍数120回/分、血圧150/90 mmHg

上記の検査値を確認し、心拍数の調節が不十分なため、心拍数の調節を目的として薬剤Aが追加された。

問216(実務)
薬剤Aとして最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 フロセミド錠


2 トルパブタン錠


3 アミオダロン塩酸塩錠


4 シベンゾリンコハク酸塩錠


5 ソタロール塩酸塩錠




問217(物理・化学・生物)
下図は薬剤Aの投与前と投与後の心電図(Ⅱ誘導)を示している。この変化が起こる理由として適切なのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2020-06-29 11.10.49.png

1 心室筋細胞からのNa流出の直接的抑制


2 心室筋細胞からのK流出の直接的抑制


3 心室筋細胞の活動電位持続時間の延長


4 洞房結節の脱分極の直接的促進


5 不応期の短縮

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問 216    
問 217    

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問216 解答 3

本患者は、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全を伴う心房細動と診断されており、心房細動による心原性脳塞栓症の予防にアピキサバン錠が、心拍数の調節を目的にビソプロロールテープが処方されている。心不全を伴う心房細動の心拍数の調節において、ビソプロロールやカルベジロールなどでコントロールが困難な場合、アミオダロンが用いられる。

1 誤
フロセミド錠はループ利尿薬であり、心臓に戻る血液量(静脈還流量)を減少させることで、主に心臓の前負荷を軽減する。本患者の心拍数の調節を目的として追加された薬剤として不適切である。

2 誤
トルバブタン錠は、集合管のV2受容体拮抗作用により、集合管における水の再吸収を抑制し、利尿作用を示す薬剤である。主に心臓の前負荷の軽減を目的としている。本患者の心拍数の調節を目的として追加された薬剤として不適切である。

3 正
冒頭解説文参照。心不全に伴う心房細動に適応をもつ抗不整脈薬であり、本患者の心拍数の調節を目的として処方された薬剤として適切である。

4 誤
シベンゾリンコハク酸塩錠は、うっ血性心不全の患者に対して禁忌である。よって、本患者の心拍数の調節を目的として追加された薬剤として不適切である。

5 誤
ソタロール塩酸塩錠は、重度のうっ血性心不全の患者には心不全を悪化させるおそれがあるため、投与禁忌とされている。また、うっ血性心不全の患者には慎重投与となっている。よって、本患者の心拍数の調節を目的として追加された薬剤として不適切である。


問217 解答 2、3

薬剤Aの投与前と投与後の心電図(Ⅱ誘導)を比較すると、QT時間が延長していることが分かる。QT時間は心室筋細胞の活動電位持続時間を反映したものであり、心室筋細胞のK流出を抑制すると活動電位持続時間が延長し、QT時間が延長する。
薬剤Aは、問216よりアミオダロン塩酸塩錠である。アミオダロン塩酸塩錠は、Vaughan Williams分類におけるⅢ群の抗不整脈薬であり、心室筋細胞からのK流出の直接抑制を行うことで、活動電位持続時間を延長し、QT時間を延長させる。

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