令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 224,225

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問 224  正答率 : 74.2%
問 225  正答率 : 59.5%

 国家試験問題

国家試験問題
65歳女性。体重50 kg。術後肺炎と診断され、喀痰から緑膿菌が検出された。医師の指示により、シプロフロキサシン注射液が静脈内投与された。

問224(物理・化学・生物)
検査部で、患者の痰から分離・同定した緑膿菌を培養し、薬剤感受性試験としてディスク法を実施した。

ディスク法の説明
寒天培地に一定量の菌を均一に広げた後、上にディスク(一定量の抗菌薬を染み込ませたろ紙)を置いて培養する方法(図1参照)。ディスクから培地に拡散した抗菌薬によって菌の発育阻止円ができ、その直径を測定する。
多剤耐性緑膿菌の場合、判定に用いる抗菌薬(β-ラクタム系、フルオロキノロン系及びアミノ配糖体系の3系統)の種類と判定に適した濃度は決められており、指定の条件で一定時間培養後、生じた阻止円の直径をもとに、感受性か耐性かを判断する。

スクリーンショット 2022-07-05 15.47.11.png

今回は、この患者由来の緑膿菌と通常の緑膿菌基準株を用いた。また、指定されたイミペネム(IPM)、シプロフロキサシン(CPFX)、アミカシン(AMK)の3剤に加え、抗菌薬XとYも調べた。その結果を図2に示す。

スクリーンショット 2022-07-05 15.47.51.png

本試験とその結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 本法は、微量液体希釈法よりも最小発育阻止濃度(MIC)を算出するのに適している。


2 阻止円の直径が大きいほど、その抗菌薬への感受性が高い。


3 この患者より単離した緑膿菌は、多剤耐性菌である。


4 抗菌薬Xは、この患者の治療薬候補になる。


5 抗菌薬Yは、この患者の治療薬候補にはならない。




問225(実務)
薬剤感受性試験結果から考えられる、この患者に最も適切な抗菌薬療法はどれか。1つ選べ。なお、薬剤はすべて注射剤である。

1 シプロフロキサシンを基本とした併用療法への変更


2 アルベカシン硫酸塩の単独療法への変更


3 ピペラシリンナトリウムの単独療法への変更


4 シプロフロキサシンの単独療法の継続


5 コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを基本とした併用療法への変更

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問224 解答 2、3

感染症の治療に抗菌薬を使用する場合、適切な薬剤を選択するためには薬剤感受性試験が不可欠である。現在、普及している薬剤感受性試験は、微量液体希釈法とディスク法がある。微量液体希釈法は感受性試験の基になる最も精密で正確な方法で、結果は最小発育阻止濃度(MIC)で表示される。一方、ディスク法は希釈法を基に制定された定性的な方法であり、阻止円直径の大きさから感受性(S)、中間(I)、耐性(R)で表現され、簡易的に行われる。
患者由来の緑膿菌の培養後のプレートでは、抗菌薬Yで発育阻止円が形成されているため感受性、それ以外の薬剤(イミペネム(IPM)、シプロフロキサシン(CPFX)、アミカシン(AMK)、抗菌薬X)は耐性であると考えられる。従って、患者より単離した緑膿菌は多剤耐性緑膿菌である。

1 誤
微量液体希釈法は、ディスク法よりも最小発育阻止濃度(MIC)を算出するのに適している(前記参照)。

2 正
発育阻止円の直径が大きいほど、その抗菌薬により試験菌の増殖が抑制されているため、その抗菌薬への感受性は高いと判断できる。

3 正
前記参照

4 誤
患者より単離した緑膿菌は、抗菌薬X等に耐性を示す多剤耐性緑膿菌であるため、抗菌薬Xは、治療候補にはならない。

5 誤
図2の結果より、緑膿菌基準株と患者由来の緑膿菌のいずれにおいても、抗菌薬Yは発育阻止円の大きさが同じことから、治療薬候補になると考えられる。


問225 解答 5

薬剤感受性試験結果より、患者由来の緑膿菌は、イミペネム(β-ラクタム系)、シプロフロキサシン(ニューキノロン系)、アミカシン(アミノグリコシド系)に対して耐性をもつと判断できる。従って、他のβ−ラクタム系、ニューキノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬にも耐性があると考えられる。以上より、選択肢1〜4の抗菌薬を使用することは不適切であり、治療薬としては、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムを基本とした併用療法への変更が適切である。なお、各抗菌薬の分類は下記の通りである。

【各抗菌薬の分類】
・β-ラクタム系:イミペネム、ピペラシリン等
・アミノグリコシド系:アミカシン、アルベカシン等
・ニューキノロン系:シプロフロキサシン等
・ポリペプチド系:コリスチン等

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