令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 226,227

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問 226  正答率 : 52.1%
問 227  正答率 : 56.3%

 国家試験問題

国家試験問題
62歳女性。身長156 cm、体重54 kg。慢性腎不全、2型糖尿病、高血圧症で外来治療中。骨粗しょう症はない。今回、慢性腎不全の病状が進行し、入院加療することになった。入院時の持参薬と検査値は以下の通りであった。

持参薬:アムロジピンベシル酸塩錠5 mg、フロセミド錠20 mg、リナグリプチン錠5 mg、ボグリボース錠0.2 mg、ポリスチレンスルホン酸カルシウム20%ゼリー25 g、球形吸着炭細粒2 g/包

検査値:Na 140 mEq/L、K 5.2 mEq/L、CI 108 mEq/L、P 5.9 mg/dL、補正Ca 7.5 mg/dL、血清アルブミン3.7 g/dL、AST 24 IU/L、ALT 26 IU/L、BUN 50.5 mg/dL、血清クレアチニン1. 8 mg/dL、eGFR 23 mL/min/1. 73 m2、intact−PTH 210 pg/mL(標準値:10〜65 pg/mL)

問226(実務)
医師は検査値を確認後、持参薬は継続服用とし、さらに薬剤を追加処方した。追加された薬剤として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 カルシトリオールカプセル


2 メナテトレノンカプセル


3 沈降炭酸カルシウム口腔内崩壊錠


4 アレンドロン酸ナトリウム水和物錠


5 シナカルセト塩酸塩錠




問227(衛生)
この患者の病態に関連するビタミンやミネラルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 カルシトリオールは、肝臓で25位が水酸化されて活性型に変換される。


2 ビタミンKは、骨のCa結合タンパク質であるオステオカルシンの遺伝子の転写を活性化する。


3 リン酸は、フィチン酸やシュウ酸とキレートを生成することにより、消化管での吸収が抑制される。


4 腎不全の進行によって腎臓での活性型ビタミンDの生成が低下すると、消化管からのカルシウム吸収が低下する。


5 この患者のintact−PTHの値から、血中カルシウム濃度を正常に維持しようとして副甲状腺機能充進状態になっていることがわかる。

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問 226    
問 227    

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問226 解答 1、3

腎臓は多様な機能をもつため、慢性腎不全になると様々な合併症を引き起こす。本患者は、慢性腎不全に伴う低カルシウム血症(基準値:8.5〜10.2 mg/dL)が見られており、血中カルシウム濃度を正常に維持しようと二次的に副甲状腺機能が亢進しているため、intact−PTH値が高い値を示していると推測できる。また、検査値より高カリウム血症(基準値:3.6〜5.2 mEq/L)、高リン血症(基準値:3.0〜4.7 mg/dL)も見られる。

1 正
カルシトリオールは、活性型ビタミンD3製剤であり、カルシウムの腸管からの吸収を促進し、血中Ca2+濃度を増加させることにより、低カルシウム血症を改善するため、慢性腎不全に伴う低カルシウム血症などに用いられる。本患者では、血中Ca2+値が基準値よりも低いため、カルシトリオールカプセルを追加することは適切である。

2 誤
メナテトレノンは、ビタミンK2製剤であり、骨量、疼痛を改善するため、骨粗しょう症の治療に用いられる。本患者は骨粗しょう症ではないため、メナテトレノンカプセルを追加することは適切ではない。

3 正
沈降炭酸カルシウムは、消化管内でリン酸イオンと結合することにより難溶性のリン酸カルシウムを形成し、腸管からリンの吸収を抑制する。その結果、血中リン濃度が低下するため、慢性腎不全患者における高リン血症の改善に用いられる。本患者では、血中リン値が高い値を示しているため、沈降炭酸カルシウム口腔内崩壊錠を追加することは適切である。

4 誤
アレンドロン酸ナトリウムは、ビスホスホネート製剤であり、骨粗しょう症の治療に用いられる。本患者は骨粗しょう症ではないため、本患者にアレンドロン酸ナトリウム水和物錠を追加することは適切ではない。

5 誤
シナカルセト塩酸塩錠は、副甲状腺のカルシウム受容体作動薬であり、維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺がん、原発性副甲状腺機能亢進症などの高カルシウム血症に用いられる。本患者では血中カルシウム濃度が基準より低い値を示しているため、シナカルセト塩酸塩錠を追加することは適切ではない。


問227 解答 4、5

1 誤
カルシトリオールは、1α位及び25位に水酸基が結合した活性型ビタミンD3製剤であり、肝臓及び腎臓での代謝活性を必要としない。なお、ビタミンDは、肝臓で25位、腎臓で1位が代謝(水酸化)を受け、活性体へと変換される。

2 誤
ビタミンKは、タンパク質中のグルタミン酸残基をγ−カルボキシル化することにより、オステオカルシンなどのビタミンK依存性タンパク質の生合成・活性化に必要な翻訳後修飾に関与する。したがって、ビタミンKは、オステオカルシンの生合成・活性化に関与するが、遺伝子の転写を活性化するわけではない。

3 誤
フィチン酸やシュウ酸とキレートを生成することにより、消化管での吸収が抑制されるのは、リン酸ではなく、カルシウムである。なお、多量のリン酸は、カルシウムの消化管吸収を阻害する。

4 正
ビタミンDは、肝臓および腎臓で代謝を受けることで活性体となり、腸管からのカルシウムの吸収を促進する。しかし、腎不全が進行すると、ビタミンDの水酸化反応(解説1参照)が低下するため、活性型ビタミンDの生成が低下し、それに伴いカルシウムの吸収も低下する。

5 正
本患者は、慢性腎不全のためカルシウムの再吸収が低下しており、低カルシウム血症を引き起こした結果、血中カルシウム濃度を正常に維持するために副甲状腺が亢進していると推測される。ゆえに、intact−PTHが基準値より高い値を示していると考えられる。

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